2018.6.21

誰よりも数を釣りたい!競技会の釣りを考察する [ 伊藤 幸一 ]

Vol.3 効率よく数を伸ばすコツ

競技会における釣りの組み立て

「まずは近場から」が基本

競技会に出るときは、その前日までに必ず下見を行って、釣れ具合やポイントの距離、時間帯による釣れ方の変化などをできるだけ詳しくチェックするようにします。下見で得られたデータを元に、試合当日の釣りを組み立てることは言うまでもありません。

ジャパンカップの決勝大会が行われる鳥取県の弓ヶ浜などこれまで何度も竿を出している場所では、ポイントやシロギスの魚影、釣れ方などがおおよそ頭に入っているので、ある程度攻め方を決めて試合に臨みます。決勝大会は毎年ほぼ同じ時期に開催されているため、過去のデータもかなり役立ちます。

弓ヶ浜は、私のホームグラウンドである湘南エリアとは比較にならないほどシロギスが濃い場所です。下見でポイントの距離はある程度は把握できますが、一夜明けると群れの寄り場が変わっていることもしばしば。したがって第一投は必ず近いポイントへキャストし、まず近場の釣れ方をチェックするようにしています。近いポイントで活発に喰ってくるならしめたものです。空気抵抗が大きい多点バリ仕掛けを楽に使えるし、手返しも早くできるので、短時間で数を伸ばせます。近場でアタリが少なく、ゆっくりサビいて待たなければ喰ってこない場合は、近いポイントにはシロギスが薄いと判断して1投で見切ります。

ここからは前日までの下見で得た情報を元に、最もアタリが多いポイントをダイレクトに狙います。6本までハリ数を減らして遠投に切り換えるか、8~10本バリ仕掛けを使い、中間距離をしつこく攻めて小型を数付けるかは、そのときの状況次第です。

試合前日までに下見を行い、できるだけ多くの情報を集めてから本番に臨みます。

第一投は必ず近いポイントへ仕掛けを入れ、群れの寄り具合をチェックします。近場で活発にアタリがあれば、手返しよく数を伸ばすチャンスです。

アタリがあったらスローなリールサビキ

仕掛けのサビキ方は、アタリを取りやすいリールサビキが基本です。一発目のアタリが出るまでは、10cm引いて止めるといった具合に、ある程度の「待ちの時間」を作るようにしています。アタリがあったらスローなサビキに切り換え、仕掛けを止めません。こうすることで多点バリ仕掛けの絡みを抑えつつ、連掛けを狙えます。

8本以上の多点バリを使うとハリの数だけ魚を付けようとする人もいますが、私はハリ数の6割程度、10本バリ仕掛けなら6尾も付いていれば十分と考えています。その理由は、魚をできるだけ多く付けるにはゆっくりサビかなければならず、手返しが遅くなってしまうからです。

魚影が濃いと感じたときは、サビくスピードを上げて多点掛けを狙います。魚影が濃く、シロギスの活性が高いときは、サビくスピードを緩めると仕掛けの移動量よりシロギスの遊泳スピードが上回ってしまい、仕掛け絡みを誘発させやすいからです。

オモリが着底したら10cm刻みでサビいては止め、アタリがあればスローなリールサビキに切り換えて連掛けを狙います。

また、スピードを上げることにより、自然と手返しのサイクルが早くなり、釣果アップにつながります。適度なスピードでサビいて「そこそこ魚が付いたな」と思った時点で仕掛けを巻き上げてしまいます。

魚を欲張らず釣りの回転を上げることで数を稼ぐわけです。手返しを早くすると魚の反応が悪くなったときもサッと次のポイントへ仕掛けを投入できます。

効率よく数を伸ばすには?

ハリ数は競技規定の上限いっぱい

魚影の濃淡、ポイントの遠近など、試合当日のコンディションは様々です。攻め方は諸条件を総合的に見て決めていきます。前回までにお話ししたとおり、私の仕掛け使いは「ポイントへ届くかぎり、ハリ数を多くする」というシンプルなものなので、さほど悩むことはありません。

4色前後までのポイントで釣れるのであれば、ハリ数は競技規定の上限いっぱい。ジャパンカップなら、遠投が必要なケース以外では10本バリ仕掛けをメインとします。多点バリ仕掛けを使う目的は、一投で多くの魚を付けたいことのほかに、エサ取りが多いときにハリにエサが残る確率を少しでも上げたいという意味もあります。

6色以上の遠投で攻めるときはハリ数を6本以下に落としますが、仕掛けが届くのであればハリ数が多いほど有利というのが基本的な考え。連結仕掛けは自由にハリ数を選べるので便利です。

シロギスの活性がそこそこ高く、アタリはあるのになぜかハリに乗らないことがありますが、このときもハリ数は変えません。ハリ数は10本のまま、ハリの号数を落としたり、形状を変えることで対処します。

魚が多いときは最も魚影が濃いエリアを集中的に狙う

釣れるポイントや距離がハッキリしているときは、攻め方で迷うことはないでしょう。しかし魚が多く、どこでも釣れるようなとき、どのように立ち回ればよいか戸惑う人も多いのではないでしょうか。この場合、私はポイントを欲張らず、最も魚影が濃いエリアを集中的、かつ手返しよく狙うようにしています。たとえば、2色以内でシロギスが喰っていて、1色半あたりが最もアタリが多いとします。多くの人は、2色半なりポイントのやや沖に仕掛けを投入し、ゆっくり手前へ引いてくるはずです。

1色半で活発にアタリがあるなら、私は2色前後に仕掛けを入れ、早めに1色半まで仕掛けを引き入れてしまいます。中途半端に釣れるポイントはスルーして、短時間で魚を付けられるポイントだけを集中的に狙う短距離戦法です。
最もアタリの多いエリアに仕掛けを通したら、待ちのアクションは入れずに巻き上げてしまいます。10本バリのうち5~6尾しか魚が付いていなくても構いません。釣りのリズムを崩さず、よいポイントだけをスピーディーに攻めることを心掛けています。

魚影が濃いときは最もアタリが多いエリアを集中的に狙います。「待てば喰う」程度のポイントはスルーします。

アタリが多くとも連掛けを欲張らず、釣りの回転は落としません。よいポイントに何度も仕掛けを通すことで数を伸ばします。

魚が薄い・どう喰わせる?

魚が少ないときは“手返しを捨てる”

日並みによっては、明らかに魚が少ないと感じることもあります。この場合は待ちのアクションを多めに絡めて、シロギスの群れが回ってきた短い時合に、できるだけ多くの魚を喰わせることを考えます。

待ちのアクション、つまり仕掛けを止める動作を多用するので、必然的に一投のスパンが長くなります。魚影が濃いときは釣りの回転を一切落としませんが、この場合は手返しという攻めの要素を捨ててしまいます。下見である程度は群れが回ってくる場所がわかっているならば、ここぞというポイントで仕掛けをスローにサビき、群れの回遊を待ちます。

魚が少なく、待ちのアクションを多めに取るときは、手返しを早めても効果は望めません。ここぞというポイントにエサを置き、シロギスの回遊を待ちます。

多点バリでできるだけ多くの魚を掛ける

「魚影が薄い」のと「喰い渋り」は違う要素です。単純に群れが小さい、あるいは群れが少ないという状況ならば、喰い気はあるということです。アタリが少ないとハリ数を少なくして、エダスの間隔を広く取りたくなるものです。しかし、ただ魚が薄いだけであればハリ数は落とさず、群れが回ってきた短い時合で、できるだけ多くの魚を掛けることを意識します。

5尾、10尾といった小さな群れが回ってきて去るまでの短い時間に、可能なかぎり多くの魚を喰わせることを考えると、やはりハリ数が多いほど有利です。私が多点バリにこだわる理由はこのあたりにあります。一度アタリがあれば仕掛けを止め、絡んでもよいくらいの気持ちで追い喰いを狙います。

せっかく群れが回ってきても、エサの付いたハリがなければ掛かりません。群れが少ないときでも多点バリ仕掛けを基本としています。

喰い渋りは魚影の濃淡に関わらず起こり得る現象です。魚影が濃い場合は場所移動、もしくは攻める距離を変えることで、フレッシュな群れを探せば解決できるケースが大半です。手強いのは魚影が薄いうえに喰い渋っている状況です。魚影が薄くても魚はエサを求めて回遊しているので、群れにあたりさえすれば、喰ってくるのは前述のとおりです。ただ網が入るような場所や、試合を繰り返した後のポイントでは、魚の警戒心がさらに高まっているので神経を使います。

この場合、手返しを早めても釣果は伸びません。まずは丁寧なエサ付けを心掛けることです。ジャリメ(イシゴカイ)であれば、胴体中央から尻尾にかけての細い部位を、小さく丁寧にハリ付けします。東京スナメ(チロリ)なら極細のものを、指などで千切らず、ハサミで5mm程度にカットしてハリ付けします。切り口をきれいにすることで、東京スナメのエキスが拡散しやすくなると考えています。

また、喰い渋り時は仕掛け使いも大きなファクターとなります。私の場合「喰い渋っているときほどモトスやハリスを細く、長くする」が基本。ハリもできるだけ自重が軽いものを選択します。形状はキツネ型、袖型どちらとも試せるように事前に準備しておくことが必須です。

一度アタリがあった場所では仕掛けを止め、魚が暴れて仕掛けが絡んでもよいくらいの気持ちで追い喰いを待ちます。

vol.4に続く