2017.09.04

ナイトゲームで狙う河口のキビレ [ 日置 淳 ]

Vol.1 基本的な釣り場の考え方とタックルについて

釣り場のセレクト

その気になれば1年中楽しめるのがキスの引き釣りであり、実際に年間を通してキスしか狙わないというキャスターも大勢おられます。かくいう私も四季を通じてキス釣りを楽しんでいますが、投げ釣りのターゲットはそれだけではありません。シーズンに応じて多彩な魚種を釣ることができるのもこの釣りの魅力です。常にさまざまな対象魚の釣期を意識して、そのチャンスとなれば実績のあるフィールドへ足を運んでいます。

特に夏~秋は夜釣りによる大物狙いが楽しいシーズンです。その対象としてはマダイ、スズキ、そしてコロダイやタマミ(フエフキダイ)の他、エリアやフィールドの条件によっていろいろな魚が候補になりますが、私のホームエリアである関西の場合は河口域に多いキビレ(キチヌ)が最も親しみやすいターゲットでしょう。
たとえば、大阪湾周辺であれば、ほとんどの河口(大きな河川なら河口に近い川筋も含めて)がその実績ポイントであり、気軽にキビレが狙えます。また、キビレの少ない地域でも同じ釣り方でチヌ(クロダイ)、スズキなどが期待でき、河口のキビレ狙いのスタイルはどこへ行っても楽しめる夜釣りのパターンの代表格だといえます。

ターゲットは身近な大物のキビレ。チヌに似ていますが、ヒレが黄色っぽいのが一番の特徴です。

さて、梅雨が明けたころに私がキビレ釣りで訪れたのも大阪湾の湾奥部にある大河川の河口から少し川筋に入った場所でした。魚種と釣り場によってはかなりシビアになるポイント選びですが、河口のキビレ狙いではあまり難しいことは考えません。そこにキビレがいるなら潮に乗ってその一帯に回遊してくることが期待できるからです。大切なのはその場所で安全かつ快適に夜釣りができるかどうかということであり、当日もそれを最優先して比較的足場がよくて釣りやすいポジションを吟味して釣り座を構えることにしました。

安全で釣りやすいポイントに入るコツはスケジュールに余裕を持って日の高いうちに現地入りすること。特に初めて入る様子がわからない場所ではそれが鉄則です。明るい時間帯なら周辺の地形や目に見える障害物のチェックも容易であり、ベストといえる釣り座を決められます。時間に余裕があれば手ごろな場所がないときに大きく移動して適当な場所を捜すこともできるでしょう。

なお、河口周辺では土手の草むらにある小道をおりて釣り場に入ることも多くなりますが、その際は帰り道を意識して目印を覚えておくのが無難です。明るいうちはスムースに通れたルートも、あたりが暗くなると本当にわかりづらくなってしまいます。いざ帰るときになって道に迷わないようご注意下さい。

明るいうちの現地着が基本。周辺の様子をしっかり観察し、暗くなっても安全に手返しできる釣り座に目をつけましょう。

スケジュールの決め手となる潮汐

型のよいキビレは沖にある底の変化に沿って回遊することが多いようです。日没を待たずに広く探ってポイント候補の目星をつけます。

大きな河川の河口域はほとんど海であり、そこでの潮の動きは複雑なのでなかなか読めない部分もありますが、それでも河口の釣り、特に川筋のポイントでは基本的に満ち潮時を中心に釣るスケジュールを考える方が有利なのは確かです。これは周辺を回遊する海の魚たちが満ちてくる潮に乗って河口に入り、引いていく潮で出ていくという傾向があるからです。

それを考えると時合、つまりよく釣れるチャンスタイムが訪れる魚の動きが特によいタイミングは干潮時から潮が満ち始めて魚が入り始めるころから、満潮を過ぎて魚が出始めるころにやってくる可能性が高いといえます。だから釣行日を考えるときはあらかじめ潮時表をチェックし、釣り場にいられる間にそのチャンスが確実に訪れる潮の日を選ぶことが大切になります。

今回の場合は夕方に干潮となり、夜8時過ぎに満潮を迎えるパターンの潮でした。これなら魚の動きが活発化して河口の時合になりやすい、干潮からの上げ始め、潮が半分ほど上がった五分満ちのころ、満潮の潮止まり前と満潮からの下げ始めというタイミングを半夜釣り(夜通し釣らず、その日のうちに納竿するパターン)でカバーできるため、気軽に楽しむ近場の釣行には理想的といえます。潮に合わせて釣行日を選ぶか、その日の潮に応じて釣る時間を調整するか、そのときどきの都合に応じてスケジュールを考えましよう。

夕方に満ちの潮が動きだしたら本番は間近。いつ時合が訪れても不思議ではありません。

置き竿釣法にマッチしたタックルでポイント候補をカバー

キビレの夜釣りでもキスの引き釣りで用いる並継竿は使えますが、この釣りでは2~4本の振出竿を並べてアタリを待つのがスタンダードなスタイルです。並継竿と振出竿の機能的な違いについては『投竿選びの基礎知識』で詳しく紹介されていますが、まず複数の竿を持ち歩くには仕舞いがコンパクトな振出竿の方が便利でしょう。また、竿立てに置いた竿でアタリをとり、なおかつエサをしっかりと喰い込ませるには穂先がやわらかめに設計された振出竿が有利なのです。

この釣りで複数の竿を出すのは、仕掛けを入れておきたいポイント候補がひとつではないからです。釣り場を観察したり、実際に仕掛けを引いてみることで目をつけた、いくつかのキビレの回遊ルートになりそうなスポットを数本の竿で同時にカバーすること、それが置き竿釣法の基本戦略です。

竿数は最大で4本でしょう。慣れないうちは2本で手返しよく釣る方が結果的によい場合も多いはずです。

ただ、むやみに多くの竿を出せばいいというものではありません。回りに他の釣り人がいてスペースが限られるときはもちろんのこと、いろいろな意味で釣りやすい条件下でも1人で効率よく扱える竿数は最大で4本と考えた方がいいでしょう。それ以上出しても結局は面倒を見きれず、ほぼ放置したような捨て竿状態になる竿が多くなります。

また、今回は4本の竿をセットした私ですが、これも常にすべて投入するわけではありません。たとえば潮流が速くなって仕掛けがなかなか落ち着かないときは、竿数を絞って自マツリ(手前マツリ。自分の仕掛け同士がオマツリすること)などのトラブルを避けるのが賢明でしょう。また、ひとつのポイントでアタリが続くようなときも2本の竿で集中的にそこを狙い、他の竿の仕掛けは上げておくことでスムースに効率よく釣れることが多いものです。

さて、この日の私が使ったロッドはNEWスピンパワーの425CX-T。標準錘負荷30号のこの振出竿は別にキビレ用ということはなく、カレイ釣りやマダイ釣りなどのスタンダードな置き竿の釣りではたいていこれを使っています。

私の体力、体格的にはBX(標準錘負荷33号)、AX(標準錘負荷35号)の竿でも釣れますが、個人的にこのクラスの振出竿を用いるのはかなりハードな条件の釣り場で大型魚を一気に浮かせたいようなケースぐらいです。軽快に数本の竿で遠投の手返しを続けるならCXが楽ですし、やわらかいぶん魚の喰い込みもよく、魚を掛けたときにも適度に曲がって急なテンションの変化によるバラシの心配も少ないと思います。また、このCXでも大物を相手にパワー不足を感じることはまずありませんし、今回のような河口や普通の波止、浜で釣るぶんにはDX(標準錘負荷27号)、EX(標準錘負荷25号)の方がよいかと考えているぐらいです。

私の場合、スタンダードな置き竿釣法では425CX-Tクラスがお気に入り。130〜150mの遠投も楽に続けられます。

リールは遠投しやすくて素早くドラグを調整できるフリーゲン35SDを使いました。

なお、リールはフリーゲンSD35。置き竿の釣りには不意の大アタリに対応するためドラグつきのリールがよく、すぐにドラグを調整できる機構があるものが便利です。竿を置くときにドラグを緩めておくと、魚が走るのに追随してラインが出るため喰い込みがよくなるケースがあります。
また、今回の釣り場でも大きなエイがヒットしましたが、ドラグを緩めていないとこのような大型魚に竿を引っ張り込まれる恐れもあるので注意しましよう。

この夜もエイが回ってきました。尻尾の毒トゲも危険なので要注意の存在です。

シンプルな1本バリ仕掛けで確実にキャッチ

今回の使用ラインはSPINPOWER EX4 PE1.5号にSPINPOWER テーパーちから糸 EX4 PE1.5-7。このポイントでは根掛かりがあまりないことがわかっていたので置き竿釣法としては細めのセッティングとし、大きな河口の釣り場を遠投で広く探るようにしました。もちろん底が荒くて根掛かりが気になる場所では太めのラインが必要ですが、底の状態がよいとわかれば細めのラインを巻いたスプールに交換し、それまでは届かなかったエリアを探ってみることも大切です。

準備が早く終わったのでとりあえずキャスト。さっそく30cmほどのキビレがきました。魚の活性は高そうです。

さて、置き竿の仕掛けでは遊動式の天秤がよく使われますが、私は固定式の天秤もよく使います。その方が飛距離は確実に伸びますし、キスの引き釣りのときと同様にオモリの重さによって向こう合わせ的に掛かることが増え、結果的にヒット率がアップしたと感じる場面も多いからです。
特にキビレの場合はその傾向が強く、遊動式では大きなアタリがでてもなかなかハリ掛かりしなかったのが、固定式に替えたとたんに掛かりだすという極端な例もありました。

エサはチロリをメインにユムシを使います。チロリは引き釣りのときと違って太めのものがベストです。

仕掛けはフロロカーボンハリス4号通し。長さは1ヒロ(1.5m程度)としました。通しというのはモトスとハリスをわけないという意味で、要するに長いハリスの先にハリを1本結んだだけのシンプルな仕掛けで、現地でも素早く作れます。ハリは軸が短めでキビレの掛かりがよいチヌバリ5号。ただ、これはチロリやマムシといった通常の虫エサを使う場合の仕様で、小型は釣れにくくアタれば大型という傾向が強いユムシをメインに使う場合はハリス5号にチヌバリ7号としますし、逆に魚の喰い込みが悪いと感じるときはハリスを3号に落とすと効果的な場面もあります。