2017.08.10
キスの引き釣りにはエサ取りの他魚がつきものです。特に多いのがガッチョ(メゴチ、テンコチ)、フグ(主にクサフグ)、ヒイラギ(ギンタ、ゼンメ、エノハ)。また小アジの大群がいて入れ喰いになることもあります。
エサ取りがいることの問題点は、それがよく掛かるほどキスのヒットする可能性があるハリの数が減ってしまうこと。また、フグはハリスを噛み切ってしまうことも多いですし、各種エサ取りはキスよりも高速遊泳が苦手なようで巻き上げ途中に回転して仕掛けのカラミを多発させるケースもあります。まあ、ガッチョやヒイラギの食味は悪くないので良型が揃えばよい土産になるともいえますが、スムーズにキス釣りを楽しむためにはできるだけエサ取りの他魚をかわすことを考えます。
基本的なエサ取り対策としては仕掛けを引くスピードの調整があります。およそキスの方がエサ取りよりも速く動くエサへの対応力が高いようなので、キスは喰いつくが他魚は掛かりにくいという速度を探るわけです。ただ、それも絶対に有効なわけではありません。キスの活性によっては他魚が喰うよりも遅いサソイでしか釣れないケースも存在し、エサ取り対策のつもりがキスの釣果ダウンにつながることもあるので注意しましょう。
仕掛けのセレクトによるエサ取り対策も有効です。私が多用する「攻めキス」「掛けキス」の各仕掛けにはハリス部分にゴールド&パールホワイトビーズを交互に施した仕様(晴天時や海水が澄んでいる状況などに高実績)、チモトを光らせるグロー留&ケイムラ留を交互に施した仕様(朝夕のまづめどきや曇天時に高実績)があり、状況に応じた使いわけでキスへのアピール力を高めています。ただ、このアピール力の高さはフグやアジなどが多いときには逆効果となることもあり、あえて通常とは逆パターンの仕様のアイテムを用いたり、自作のアクセサリー類を使わないシンプルなタイプの仕掛けを起用してエサ取りの多さに対応することもあります。
また、何よりも大切なのは各ポイント内でキスが多くてエサ取りが少ないエリアをいち早くつかむことでしょう。
どれだけ遠投してもエサ取りばかりだったのに波打ち際にはキスの群れが溜まっていたとか、その逆のパターンだったりするのはよくあること。沖にある底の起伏のカケアガリはフグが多いのに手前のカケサガリではキスの連掛けになるなど、そのポイントにおけるキスとエサ取りの分布状態を常に意識することが大切です。
そして、ある程度探って満足にキスが釣れるエリアがないようなら即座に移動しましょう。ポイントの的確な見切りでムダな時間をなくすのも有効なエサ取り対策です。
キスのような小型魚が集まる場所では、ハリのエサではなく掛かったキス自体を取っていくような大型のフィッシュイーター(魚食魚)が存在します。その乱入はシビアに釣果を競うトーナメントの場では困りものですが、通常の釣行ではうれしい他魚の到来と考える方が前向きでしょう。
個人的にも掛けた魚の顔も見ずにバラすのは性に合いません。サソイや取り込みの最中にキスを襲う大型魚のアタリがくれば、そのときばかりは釣りの効率そっちのけで時間をかけてファイトを繰り広げています。
ただ、使用する仕掛けは大きくても30cmのキスを対象にしたものです。今回の山陰釣行でも最初にきた大物はガツンとアタッた瞬間にはモトスから仕掛けを切っていきました。
これではどうしようもありませんが、次のポイントできた大アタリにはすかさず竿先を送り、即座にラインを出すことで初期対応に成功。そこからじっくりとやり取りをすることができました。
細い引き釣り仕掛けによる大型魚とのファイトにおけるキーポイントは無理をしないこと。
リールのストッパーをオフにしてハンドルを放せばスムーズにラインを送り込めるようにし、竿先を30cmから1m程度ゆっくりと前後させるポンピング(竿で魚を寄せ、竿を戻しながらラインを回収する動作)を続け、魚が走りだしたら止めようとせずにラインを出します。とにかく本来は最低でもハリス3~4号の仕掛けでないと対応できないサイズの魚が相手ですし、砂浜では魚が突っ込むような根もありません。細仕掛けにできるだけ負荷をかけないように注意してほとんど竿先を曲げずにやり取りします。
当日のキスがいたのは主に6色ライン。この大型魚もその付近でヒットしたため寄せてくるのに20分ほどかかりました。おそらく回りで見ている人には何をしているのかもわからなかったはずですが、掛けた当人はその間ずっとスリリングなファイトを楽しんでいたわけです。また、何度もラインを出して魚を走らせるのには、その間に魚が喰いついていないハリが魚体にスレ掛かりすることを期待するという狙いもあります。
ハリス1号のハリが1本しか掛かっていないと最も魚の抵抗が大きくなる波打ち際でバラシに終わる可能性大ですが、他に1本でも2本でも魚体をとらえているハリがあればランディングの成功率が高まるからです。
さて、苦労して寄せてきてもエイやサメの類といった土産にならない魚でガッカリということもありますが(エイの場合は首を振るような動きがなく、一本調子で引くだけなのでそれとわかります)、今回の獲物は50cmオーバーのマゴチでした。
魚が最も暴れるのはズリ上げるとき。波が寄せるタイミングで後退しながらスムーズに浜へ上げ、次の波がくる前に駆け寄って足で魚を押さえ込み、手ふきタオルで魚の口をつかんで取り込みました(マゴチだとエラブタ回りのトゲ、ヒラメなら鋭い歯でケガをする恐れがあるので素手でつかもうとするのは禁物)。
そんなわけで当日の大型魚らしきアタリは2回あり、そのうち1回はランディングに成功してキスの土産に花を添えてくれました。
引き釣りをしていると大型魚のアタリが意外なほど多い場面もあり、私はマゴチの他、ヒラメやエソ、チヌなどさまざまな魚種の型物を取り込んでいます。それらしい大物がきたときは本気で取り込むことを考えてみましょう。
当日の納竿間際には掛かったキスにガツンと他魚が喰いついたようなアタリのあと、少し走ってから止まり、以後は動きのないままキスだけを取られることが二度ほどありました。
そして三度めには首の部分が何かにかじられたようになったキスが上がってきます。相手がマゴチやヒラメの場合、こんなときにはキスの体側が傷ついてウロコがはがれたような状態になっているものです。
これは魚の仕業ではありません。
さらに同じようなアタリがあったので、今度はあまり間を置かずに寄せにかかりました。ときどき強く引き込む抵抗があるときはラインを送りますが、相手が止まればゆっくりと寄せるというパターンです。やはり遠投でのヒットだったため時間はかかりましたが、何とか波打ち際にズリ上げることができました。相手は予想通りにイカ。胴長30cm近い立派なコウイカの類です。
砂地のキスはコウイカやアオリイカなどにとってもよいエサになっているようで、波止や磯の釣りものというイメージがあるこれらのイカが砂浜にいることは珍しくありません。
イカの場合は足でエサをつかまえたらクチバシ状の歯でついばむように捕食します。このため他のフィッシュイーターのように口へのハリ掛かりは期待できませんし、思ったほどスレ掛かりもしない感じです(タコの類なら結構掛かります)。
同じポイントで何度もキスを取られるのをマゴチやヒラメの仕業だと勘違いして何とか喰い込ませようと粘ることのないよう注意して下さい。
ちなみに、このとき取り込んだコウイカにもハリは1本も掛かっていませんでした。
ただ、ヤエンのイカ釣りなどをしているとわかるのですが、イカはある程度の時間抱いていたエサには強く執着するようで、うまく引いてくれば足もとまで寄せられることも少なくありません。また、波に乗せて浜に上げればそこで暴れることもないので最後にエサを放しても取り込みは可能です。掛けたキスにイカが乗ったような気配があれば、目先のかわった土産のゲットにチャレンジしてみるのもいいかと思います。