2017.07.13

キス攻略の快釣スキル [ 日置 淳 ]

Vol.2 スケジュール&釣り場移動のマネージメント

釣行スケジュールの考え方

まだ海水温が低めで推移しているシーズン初期の場合、早朝のキスは活性が低くて喰いが悪いケースが目立ち、昼前から夕方にかけての時間帯に喰いが立つことが多いものです。そのため今回の釣行でも午前7時半に現地着、8時ぐらいから釣るという比較的のんびりしたスタートとし、そのぶん日没近くまでじっくりと狙う感じのスケジュールとしました。

もちろん竿を出してみれば初期でも朝まづめからチャンスが訪れる可能性はありますし、夏の高水温期にはむしろ早朝にアタリが集中することもあります。また、時期と場所によっては夜間でもキスの引き釣りが成立するものです。そういう意味では時間の許す限りキャストを続ける方がおもしろいという考え方もできるでしょう。しかし、砂浜を歩き回って遠投を続けることの多いキス釣りでは思った以上に体力を消費します。特に夏場は炎天下の釣りとなればなおさらです。それだけに無理のある釣行スケジュールの設定はおすすめできません。
私の場合、基本的に夜にキスを狙うのは置き竿による大物狙いのときぐらいとしています。引き釣りの際は未明の現地着となってもいきなり竿を出すことはなく、夜明けまでは休憩時間としてベストコンディションで日中の引き釣りを楽しむように心がけています。それでも真夏なら間に休憩を入れるようにし、しっかりと水分や塩分を摂取しないと夕方まで体力が持たないものですし、無理をすると帰路のドライブが危険をともないます。

体力に自信のない場合は午前、午後のいずれかをメインにした半日釣りが楽でしょう。1泊の予定なら初日は昼からスタート、翌日は昼で納竿というのもおすすめです。疲労によって集中力の欠けた状態では何かとトラブルが起こりやすくて釣りもスムーズに楽しめません。常にベストといえるコンディションで釣り場に立てるようなスケジュールを設定しましょう。

なお、釣行先が海峡部、湾口の周辺、島との水道部などで潮の流れが速くて釣りづらい時間帯のあることが予想される場合は、事前に潮時をチェックして比較的流れが穏やかになる時間帯(主に満潮時、干潮時の前後)をメインに釣れるようにスケジュールを考えることも重要です。また、満潮時は浜が水没してしまう場所では当然ながら干潮の前後を中心に釣れるよう潮時を調べておかねばなりません。釣り場によっては満ち潮、下げ潮のいずれかがよいという傾向もあり、そのような情報がわかっていればそれなりに釣る時間帯を考慮しておく必要があるでしょう。

浜に立ったら、まずは柔軟体操。十分に体をほぐしてからキャストを始めます

投点、探るエリアのイメージ

さて、当日は広い釣り場の一帯を探って今シーズンの手応えを感じておきたいという意識もありましたから、最初はエリアの北端付近に入りました。そこでの1投めの投点は7色ライン(25m毎の色分けライン7色と力糸が出ている状態)。最初は何の反応もなく「キスがいるのか……?」と、ちょっと不安を感じましたが、およそ6色半の前後で数回のアタリをキャッチ。回収してみると20㎝オーバーの良型混じりで4連と幸先のよいスタートとなりました。

1投めから7色ラインに投げたのは時期的に中~近投のエリアまで寄っているキスはまだまだ少ないとの考えからです。そしてアタリが集中した6色半の付近を過ぎてからは反応がなくなったので5色にかかるあたりで回収。次からも同じようなエリアで2~4連のヒットを楽しみました。

結果的に今回の釣行でメインとなった投点は同じような感じでした。以後、浜を南下して数個所の釣り場に入ってみましたが、いずれもヒットゾーンは6~7色ラインで海底にカケアガリの存在を感じられるポイントだったのです。このように多少移動しても同じエリア内では全体に釣れるラインが似通ってくることは多く、当日のキスの寄り場のパターンを把握することは効率よく釣ることにつながります。

ただ、遠投で釣れているからといって手前のポイントをずっとノーマークにしておくことはありません。今回も各ポイントで1~2度は5色より手前を引いてみてキスの存在を確かめました。当日はそれで散発的に小型キスがアタる程度でしたが、場所によってはもっと近くにも沖と同様に釣れるエリアが存在する可能性があるからです。

まあ、気持ちよく遠投すること自体が投げ釣りの大きな楽しみだと感じている私としては、沖めに投げれば投げるほどキスの数・型がよくなるという状況が理想ではありますが、ポイントは近い方が手返しに時間をかけずに効率よく釣れるのは確かです。何個所か探るうちに遠投がよいとの印象を受けたとしても、沖にしか魚がいないと決めつけては手前のヒットゾーンを見逃すことになりかねません。当日の投点の傾向は十分意識しつつ、ときどきそれ以外のエリアもチェックして取りこぼしをなくすようにしたいものです。

シーズン初期は遠投のエリアからサーチ

基本的なサソイのパターン

引き釣りの場合、仕掛けを引いて(サビいて)エサの存在をアピールすることがサソイ、つまりキスの喰いをうながすのに有効なアクションとなります。問題はそのときのスピードですが、それに一定の正解はありません。適度なサソイの速度はキスの活性によってかわってくるからです。基本的にキスの活性が低くて喰いが悪いときほどスローなサソイ、活性が高くて喰いがよいときは速いサソイが有効になります。

仕掛けの引き方には竿を立ててリールでラインを巻くスタイルの「リールサビキ」、低く構えた竿を操作することで引く「竿サビキ」がありますが、今回の私はキスがいると感じた沖めのカケアガリ(仕掛けを引く抵抗が増すことでその存在がわかります)では竿サビキを多用しました。さすがにシーズン初期のキスは群れが小さく活性も低めで積極的にエサを追わない状況でしたから、ゆっくりとていねいに底の変化をとらえながら小さなアタリをとりやすい竿サビキが有効だったわけです。

また、スローに誘う中では「止め」、つまり仕掛けを動かさないこともおもしろいサソイになります。ジワーッと引いては止め、またジワーッと引く。ルアー釣りでいうところのストップ&ゴー的な動作に飛びつくキスは多いものです。止めの時間は魚の反応に応じてひと呼吸から数秒とかえていきますが、ときには数十秒も止めないと喰ってこない渋いケースもあります。

竿サビキではロッドの繊細な横移動でていねいにアタリをとらえていきます

典型的なリールサビキのスタイル。竿尻を地面やクーラーに当てることでアタリが明確になります。

次はリールサビキについても説明しておきましょう。

このスタイルでもリーリングスピードの調整でスローな釣り、ストップ&ゴーのサソイは可能ですが、どちらかといえばアップテンポにポイントを探っていく速い釣りに向いています。

キスの活性が高いときは魚が掛かる範囲で最も速いスピードを探り当てるのがトラブルなく効率よく釣るキーポイントになります。

そんな釣りを竿サビキでするのは大変ですが、リールサビキならリーリングする手を速めていくだけでいいのです。

また、あまり期待できないエリアはリールサビキで速めに仕掛けを通過させ、ここぞという場所では竿サビキというパターンも多用することになります。

釣果を安定させるキャストポジションの移動

今回の釣りでは15~18㎝の中型キスを中心に20~24cmの良型が混じってくるという状態でした。
素バリを引くことはほとんどなく、主に8本バリ仕掛けを用いていて平均3~5連、他より魚の多い場所では7~8連のヒットが続くひとときも楽しめました。

ただ、そんな中でも小型が1~2匹しか掛からない場面がありました。それはポイント(キス)がスレてきたと考えられる状況です。

ポイントがスレるというのは、その場の魚の警戒心が高まったり、魚が散ってしまったりした状態のこと。これは何度も同じ場所を狙うことで起こるもので、だんだんと釣れるキスの数・型が落ちてくるのがそのサインであり、最終的には素バリを引くようになってしまいます。
それを防ぐには投点を釣れているラインより沖めに設定してオモリの着水音で魚を散らさないような配慮も必要ですが、それでも釣り続けていればポイントは必ずスレてきます。安定した釣果をキープする早道はスレたポイントで粘らず移動することでしょう。

周囲に釣り人が少なくて割と気兼ねなく動ける場合、私なら調子よく釣れているときでも1投ごとに立ち位置を数mずつかえていきます。それだけでもポイントに与えるプレッシャーが多少なりとも軽減できると思うからです。また、そうする中で少しでも釣れるペースがダウンしたと感じたら10~20m、もしくはそれ以上動いてフレッシュなポイントを求めます。

「ポイントがスレてきたかな……?」と、本格的に感じてから場所をかえているようでは効率よく釣れません。できるだけ型のよいキスを数多く掛けていくためにはハイテンポなポイントの見切りが必要です。アタリの遠くなった場所は深追いせず、ひと通り探り歩いたらあらかじめ目をつけておいた次の釣り場候補へと大移動する方が楽しめるケースが多いものです。

こまめに移動を続けるために専用のシューズ(アクティブ・サーフシューズ)で足もとをかためています

なお、いったんスレを感じた場所でも時間をあけてポイントを休ませると再び活性の高いキスの群れが入っていることがあります。何個所か探ったあとにもう一度狙ってみるのもいいでしょう。それは何らかの事情でひとつの釣り場だけしか狙えないケースでも同様です。ポイントがスレてきたと感じたら投入をやめ、しばらく休憩時間をはさむことで再び喰いが上向くことが多々あります。移動ができるときもできないときも、可能な限りフレッシュな状態のポイントを釣ることを考えたいものです。

移動の多い釣りだけに荷物をコンパクトにまとめておくことも大切です

vol.3に続く