約800年の歴史を誇る、世界的な刃物の産地・岐阜県関市の職人がひとつひとつ手作業で造った、PEラインに特化した小型バサミです。切りにくいPEラインもテンションをかけなくてもスパッと切ることができ、刃先が丸くなっているため安心してポケットに入れて持ち運ぶことができます。またハンドル部分は、手袋をつけたままでも使いやすいように穴が大きなデザインを採用。
約800年の歴史を誇る、世界的な刃物の産地・岐阜県関市の職人がひとつひとつ手作業で造った、PEラインに特化した小型バサミです。切りにくいPEラインもテンションをかけなくてもスパッと切ることができ、刃先が丸くなっているため安心してポケットに入れて持ち運ぶことができます。またハンドル部分は、手袋をつけたままでも使いやすいように穴が大きなデザインを採用。
今もなお受け継がれる物作りへの”想い” ー約800年の歴史ある関市の刃物職人が手掛けるフィッシングギア
シマノが手がけるツールの中でも、特にユーザーからの高い人気を誇る製品が、切りにくいPEラインもスパッと切れる「スパシザー」、そして幅広いシーンで活躍する「バンノウハサミ」だ。これらのハサミは、岐阜県の関市で職人の手によって造られている。いかにして釣り人にとって理想的な切れ味が実現しているのか。本製品の制作過程やシマノが職人たちと築き上げてきた品質、そしてものづくりに込めた想いを造り手の言葉と共に紹介しよう。
「スパシザー」や「バンノウハサミ」のほか、釣り人に愛されるさまざまな製品をシマノと約30年にわたって共につくり上げてきた、とある製作所が岐阜県関市にある。関市といえば、「ドイツのゾーリンゲン」「イギリスのシェフィールド」と並ぶ“刃物の3S”に数えられる世界的な産地であり、その歴史は約800年前の鎌倉時代にまでさかのぼる。
当時、各地で起こっていた戦乱から逃れ、関の地に集まってきた刀鍛冶たち。彼らは飛騨で作られる豊富な炭、奥美濃から流れる水、そして焼き入れに必要な粘土を見つけたことから、ここに定住し「刃物の町」としての歴史がスタートした。その後も消費地となる江戸と大坂の間に位置する地の利を活かし、物流の拠点として発展。時代の移り変わりと共に、刀から包丁、カミソリ、そしてハサミなど形を変えながら、その伝統と技術が継承され、今もなお人々の生活において欠かせない刃物が、ひとつひとつ職人の手によって造られている。
「時代に合わせてカタチを変えてきたからこそ、関の地では刃物づくりが受け継がれてきました。こだわりすぎていては、食っていけない。カタチを変えながら、求められたもの以上のものを造る、そのバランス感覚を持った人間こそが職人なのです」と、製作所の代表。
続けて、「もっと効率のいい方法を選ぶこともできたと思います。人の手を機械に替え、時間を短く、値段の高いものを造り続ければいい。けれども、機械では安定していいものを造り続けることができないのが刃物です」と語る。
包丁やハサミなど刃物のほか、茶碗などの陶器、ガラスなどには「焼入れ」という工程がある。この熱処理の後、冷やして固めることで硬度を増す作業のことをいうが、その過程では必ず歪みが生まれるという。この歪みについては、まだ生じ方や規則性など科学的にも実証されていないため、最後は熟練した職人の手によって、ひとつひとつ異なる歪みを調整しなければ理想とする切れ味は生まれない。
「ハサミづくりは、常に歪みとの戦いなんです」と語るのは、シマノのハサミを手掛ける職人の内のひとり。焼入れで不特定の歪みが生じる以上、抜群の切れ味を数値化できたとしても、機械で大量に同じものを造ることができない。そのため、ある程度は機械に替えて効率化しながらも、最後は人の手で、個体差のあるハサミに合わせながら刃を入れたり、試し切りを重ねながら曲げる調整が必要となる。
特に、釣りに欠かせないPEラインを切るハサミづくりは難しい。そもそも魚がかかっても簡単に切れないように作られているPEラインをスパスパと切れるハサミほどハードルが高いことはない。「今でも、うまくいかないことがあるぐらい難しいことなんです」と、この道25年の職人でも試行錯誤の連続だった。
PEラインが切りにくいというのは、ラインまたはハサミ自体が動いて逃げをつくってしまうためである。これをスパスパと切れるようにするためには、さまざまなバランスが重要だと語る。「PEラインは切れ味を極めたところで切れるものではなく、PEラインが逃げないようにギザ刃を入れたり、どこで切っても切れるような刃幅やカシメの支点の位置、適度な剛性、交差角の角度といったトータルバランスが求められる。またハサミを開閉する時の重さも重要で、軽すぎてはPEラインに逃げができてしまうため、しっかりととらえて切れるよう重めに調整しています。これらのバランスがとれたデザイン性と、個体差に合わせながら調整することによって、はじめてシマノのハサミのように、テンションをかけなくても切れる品質が実現できています」
『スパシザー』であれば手袋をしたままでも使いやすい様にデザインされたグリップ。PEラインのカットに特化した切れ味と、細かい作業にも適した刃先が特徴的だ。『バンノウバサミ』は言葉の通り、PEラインはもちろん、魚を捌いたりと何にでも使える様に大きなブレードにギザ刃がついている。それぞれの理想的なカタチによって刃の入れ方も調整も変わるため、言葉では言い表すことができない、職人が培ってきた長年の感覚と目が必要となる。そのため1日に造ることができても400本が限界となっている。
「昔から『馬鹿と鋏(ハサミ)は使いよう』という、ことわざがありますよね。切れ味が悪くても、ハサミは力を入れたり、ねじればだいたいのものは切れるんです。しかし私たちは、どんな人でも、上下に動かすだけで、あるいは適当に切っても切れるようなハサミを造らなければいけないと思っています。自分自身が使っていて気持ちがいい満足いくものでなければ、手に取ってくれた人も満足してくれないと思うので」と、シマノのハサミづくりにかける想いを明かしてくれた。
シーンに合わせた使い勝手のよいデザイン性と、スパッと切れる機能性には、職人たちと共に築き上げてきた、ものづくりの精神が詰まっている。最後に、製作所の代表はシマノと歩んできたものづくりについてこう振り返る。「シマノさんは品質への妥協がなく、貪欲ですよね。最初はついていくのが大変でしたよ。我々の刃物の常識を超えた、使い手にとっての常識や理想をもって製品を生み出そうとしているから」と、製作所の代表。『よく切れるものを造る』といっても、どの程度のものが切れて、何回切れるのか、何グラムの力で切れないといけないという数値化が必要ですよね。私たちはそのリクエストを受け、要望されたものよりも少しサービスした品質を作り出さないといけない。これは今でもとても大変なことに変わりありません。しかし、職人さんのこだわりもそうですが、一切妥協せず、とことん追求し続ける姿勢があってこそよりよいものを生み出してこれた。そこにこそ、職人の姿があるのかもしれません。“いいものをつくりたい”という精神は、私たちもシマノのみなさんと同じなので。その精神が好きで今日までやってこれたところもあり、なにより私たちの支えでもあります」
そして、これからの未来についても語ってくれた。「いつの日か、“釣り人ならシマノの商品を必ず持っている”と言ってもらえるように、誰しもが欠かせないツールを一緒に造っていきたいです。ハサミという道具ひとつとっても、『軽くていいね』とか『安くて、すごく切れるね』だったり、どんな理由でもいいので。自分も釣りが好きだからこそ、釣り人に長く愛されるものが造ることができたらうれしいですね」
シマノの追い求める品質は、関市の伝統と技術が支えている。ひとつひとつ職人の手でつくられた唯一無二の切れ味を、ぜひその手で体験していただきたい。
焼き入れで生じる歪みの影響で、ひとつひとつ異なるハサミの形や反りを職人が見極め、ひとつひとつ丁寧に刃先まで均等になるよう刃付けしています。これこそが機械ではなく人の手でしか生み出せない切れ味となります。
PEラインは、切れ味を極めても切ることができません。スパッと切るためにはカシメの重さや交差角、剛性など全体のバランスが重要となるため、最後は職人が長年の経験を頼りに、個体差に合わせて最終調整しています。
ハサミを開閉する時の重さが、軽すぎてはPEラインに逃げができてうまく切れない原因となります。しっかりとラインをとらえて切れるよう重めにしています。
ハサミをねじったり力を入れたりすることなく、上下に動かすだけで誰でも簡単にPEラインが切れるよう試し切りを何度も重ねてバランスを微調整しています。
●サビに強いフッ素加工済みステンレス製
●PEライン、リーダーのカットに適したギザ刃入り
●グローブをしたまま使えるビッグホールハンドルを採用