JOURNAL
「フィールドに合わせたダブルハンドの選び方」安田龍司

タックル事情は日々進化し、タブルハンドはライト化が進んでいる。
そんな今、フィールドによる使い分けの最新事情について、安田龍司さんに解説していただいた。
フィールド&スタイルに合わせる
ダブルハンド・ロッドがポピュラーになって久しい。おおまかなトレンドとしては近年、タックルのライト化が進んでいる。具体的には、使われるロッドの番手が下がっている。さらに、番手に比例する部分もあるのだろうが、長さも短めが選ばれる傾向がある。しかながら、スタイルが多様化している近年、それぞれのスタイルに合わせて選ぶのが基本。
そこで、オーバーヘッドとスペイ系のキャスティングの両方を臨機応変に使い分け、スイングだけでなくナチュラルなドリフトも強く意識したスタイルを実践している安田龍司さんに、フィールドに合わせたタックル選びの最新事情を紹介していただいた。

まず、ダブルハンド・ロッドを使うシーンとしておおまかに、以下の5つに分けてみた。①大河川本流の中下流域、②大河川本流の上流域、③大河川に次ぐ中規模河川の本流域(準本流)、①湖、⑤海。フィールドの個性や魚種などにより変わる部分もあるが、ここではこの5つのシーンを想定した。なお、安田さんは自身が監修したシマノ『アスキス』の5モデルを使い分けている。12・6フィート6番~15フィート8番。やや長めのスペックのモデルをラインアップするのは、ナチュラルドリフトを意識すると、ロングロッドが有利なため。アスキスは軽さと高感度が特筆すべき特徴。手にすれば、スペックほどの長さを思わせない軽さを実感でき、ロングロッドのアドバンテージが際立つ。14フィート8番で、200gを切る195gを実現している。


本流のロッド選び
本流で使用するロッドを選ぶ場合、基本的には河川の規模に合わせて選ぶ。ただし、ナチュラルドリフトを重視すると、シューティングラインを高く持ち上げたいこと、送り込む距離を長く取りたいことなどから、スイングより長いロッドが有利といえる。このため、どんなスタイルを重視するかも、ロッド選びの重要な要素といえる。


●大河川本流中下流域
国内の大河川本流域では、14・6フィート7番、14&15フィート8番を使用。川の規模にもよるが、繊細なナチュラルドリフトを重視すれば14・6フィート7番が秀逸。8番の14フィートと15フィートは、川の規模、ないしは流速や水深を考慮して選ぶ。マックスレベルで沈めたい場合、最も重い550グレインの出番となり、この場合、必然的に15フィートになる。フィールドの規模や対象魚によりロッドを選ぶこともあるが、使うべきラインを基準に選ぶという考え方もときには必要。それが何より重要なキーワードになることがある。
●大河川本流上流域
大河川の本流でも、上流に向かえば規模はやや小さくなる。その場合は、13・6フィート6番、14・6フィート7番、14フィート8番を使用する。ナチュラルドリフトを意識すれば、14・6フィート7番に手が伸びる。13・6フィート6番と14フィート8番の使い分けは、川の規模に応じて。大河川の本流でも上流域になると、流れが細いポイントが目立つようになる。そんな場合、やや短めに加工したラインの出番が増える。これは、ナチュラルでもスイングでも同様。
●中規模河川本流(準本流)
たとえばかつての北海道では、盛夏の一時期を除けば、比較的長期にわたって本流の釣りが楽しめた。しかし近年、台風による被災の影響、夏場の渇水と高水温などにより、以前より好機が短くなっている。被災の影響か、本流の魚が少なくなってしまったフィールドもある。そうしたなか、大河川の本流ばかりでなく、それに次ぐ規模の”準本流4にも目を向けている。そこで活躍するのは6番。アスキスの6番の守備範囲の広さには目を見張るものがある。35m以上の実的距離を想定しているが、硬さはなく、あくまで繊細。ヒット後はよく曲がるが、フィールドテストではシロザケも難なく引き寄せられたほどのパワーを秘める。細めのティペットによる大ものねらい、湖のドライフライやストリーマーのリトリーブもこなす。
湖&海
●湖 湖では近年、ダブルハンドがスタンダードになった感がある。当初は8~10番という高番手も使われていたが、ライト化の流れが顕著。そんな今、安田さんがメインで使うのは6番。ラインは主に、スペイ系とオーバーヘッドの両方のキャスティングをこなすSA『アトランティックサーモンショート」。別表のとおり、オーバーヘッドを意識したウエイトをセレクトしている。別での使用はまだあまりポピュラーではないが、SA『シューティングテーパーショートRタイプホバー/クリア』もおすすめ。全長が26~29フィートと短く、バックスペースの制約が大きいポイントで有力な選択肢のひとつ。クリアとホバーのシンクレートが綿密に設計され、リトリーブの釣りにも向く。12・6フィート6番とアトランティックサーモンショート・340グレイン(スイッチロッド用)・フローティングの組み合わせは、ドライフライの釣りにおすすめ。非常に軽快な釣りが楽しめる。
●海 海アメや海サクラ、カラフトマスやシロザケなど、サーフの釣りでも近年、ダブルハンドが主流になっている。メインで使うのは8番。波が低く、穏やかなときは14フィート。軽めのラインで繊細な釣りを心掛けたい。波が高いときは15フィートで波をかわす。アスキスの実釣距離は、14フィート8番は45m前後、15フィート8番は45~50mの設定で開発されている。カラフトマスやシロザケねらいで、フライを水面直下に漂わせたいとき、SA『ST九頭竜スペシャル-R』がおすすめ。このラインは浮力を低めに設定しており、浮きすぎず、波の影響を受けにくい。表層を安定してスローリトリーブすることができる。

目的を明確にし、魚に近づく
ダブルハンド・ロッドは近年、ライト&ショート化の流れが顕著。確かに、かってはややオーバースペックなものが使われていたシーンもあり、その流れは必然ともいえるだろう。しかし、過度にそれを意識する必要はなく、あくまで自分がやりたい釣り、それが求めるスペックを冷静に見つめ、判断することが重要といえる。
ナチュラルなドリフトを意識すれば、ロッドは断然、長いほうがよい。かつてなら、長ければ重くなり、キャスト後の操作性、感度という部分がスポイルされるなど、ジレンマがあった。しかし、アスキスはこの課題を軽々とクリア。さらにその上をいき、新たな可能性を感じさせてくれる。技術は着実に進歩している。ぜひそれにふれ、必要以上にトレンドに流されることなく、自身の釣りを冷静に見つめ、高めていきたい。
ダブルハンド・ロッドもいよいよ成熟期に入ってきた。どのタックルを選ぶか?それもまたかなり重要、かつ、フライフィッシングの大きな楽しみになってきている。


