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2025年サクラマスシーズン総括

豪雪に伴う雪代大増水と慢性的濁りに見舞われた2025年春

7月、ほとんどの川ではアユ釣りが解禁になりアユ釣り師で連日賑わっているようだ。
今年2025年は全国的に天然遡上のアユが全体的に多いようで、アユ釣りは軒並みに好釣果の声が聞こえてくる。

さて、アユ釣りと入れ替わる形で終了を迎えるのが(北海道は除く)北陸・東北の主要河川でのサクラマスだ。

サクラマスの川釣りは県や川ごとによって解禁日の設定が異なっているが、早い川では1月1日から遊漁期間が解禁される。
今回は総括編として、今年の動向を振り返っていこう。

全国主要(降海遡上型)サクラマス河川のうち、トップバッターで解禁になるのは東北の宮城県。
その中でも太平洋側に河口がひらく北上川水系のうち旧北上川と新北上川(追波川)の2河川である。
1月1日から解禁ということで、全国最速で解禁される降海遡上型サクラマス河川である。

1月といえば釣り業界最大のフィッシングショー「釣りフェスin横浜」が開催され、シマノブースはじめ大きな注目を集めるがそれと前後する形で私もサクラマス釣りをスタートさせる。

厳寒期、1月からサクラマスを追い求めて

今年は釣りフェスが閉幕した1月下旬からサクラマスを追って川辺に立った。

魚が多い年であれば解禁の1月から釣果が聞かれるものであるが、今年1月はまったく釣果情報はなく、2月も、3月も、4月も…北上川水系はどうしたことか…サクラマスの釣果が非常に乏しくほとんど釣れていない状況に陥っていた。

良かったのは北上川水系有する太平洋側ではなく、日本海側河川。

中でも福井県九頭竜川~東北日本海側の山形県最上川あたりまでのエリア全般にサクラマスの釣果が飛躍的に伸び、なかでも庄内平野を流れる山形県赤川は3月1日の解禁以降、連日サクラマスの好釣果に沸いた。ヒット率でいえばおそらく今年は全国トップクラスだったと思う。 同じ山形県内の河川ではサクラマスの本場ロシアで見られるようなパパシーマ(オスのサクラマス)77cmという大物があがったことも印象に残る。

その後も福井県、山形県、秋田県などでは70cmオーバーの大型サクラマスが釣れたという話もたびたび注目を集めた。

太平洋側河川が不発に終わった反面、日本海側は好調で、ひときわ山形県・新潟県・福井県あたりの釣果情報は連日飛び交う様子だった。

遡上はある。だが、しかし……

冬の積雪の名残で、大量の雪代(雪解け水)が流入し続けた東北日本海側。河川によっては満水、あるいはそれ以上の増水で釣りは解禁されていてもまったく釣りにならない河川・日もこの春は長かった。

4月、日本国内における本州最大スケールのサクラマスの聖地とされる秋田県。
秋田県といえば北から順に米代川・雄物川・子吉川の『秋田サクラマス三大河川』が有名で、米代川支流の阿仁川や雄物川支流の玉川など支流域にも多くの豊かな釣り場が多い。

私も4月の第1週末から今年も毎週のように秋田県米代川通いに勤しんだのが、この冬の東北(特に青森県や秋田県)は近年稀にみるほど積雪量が多く、川の本流へ雪代流入に伴う慢性的な高水位と激濁りに翻弄されることとなる。

いつもなら入川できる釣り場も増水・満水で釣りができず、かろうじて釣りができそうなポイントを点々と探し歩きながら水系を釣り歩く展開を日々余儀なくされたが一向に減水の気配を見せない大河の激流にふりまわされる形となり、ようやく今年初バイト、初ヒットに至ったのは4月も下旬になってから。

早い年には太平洋側の北上川水系で先行して2月に初ものを手中に収めているし、通常であれば3月には釣っているのだが、過去最遅でのヒットとなったのが今年のサクラマスシーズンだった。

今年はサクラマス釣り歴33年を迎え、そんななかでも18歳のときから毎年欠かさずサクラマスを釣りあげてきたキャリアがあるだけに「いよいよ今年はダメなのか…」そんな不安にも駆られたりしたが、これもひとえサクラマスへの情熱と平時の少しずつの積み重ねが功を奏して最初の1尾にたどり着いた。

4月下旬になって増水からの引き際のタイミングでようやく今年1尾目のサクラマス(60cm)をキャッチした。1月からこの瞬間を待ちわびていたので喜びもひとしお。

1匹でも釣れているだけいいほうではあるが願わくば1匹で終わりたくない、と続く5月・6月もサクラマス釣行を継続。

1ヶ月遅れのベスト水位到来

5月になると雪代の増水は沈静化したが、今度は田んぼの田植えに伴う代掻き水(泥水)の流入が。水中には浮遊物が多く、水の透明度は相変わらず良好とは言えなかった。

雪代の増水とゴールデンウィークから流れ出る田んぼの代掻きの泥水の収まり具合が両方沈静化した5月のタイミングで米代川水系は通常運転に戻ったような感じだった。

5月にある程度まとまった釣果を経たことで溜飲を下げた。

多くの困難を乗り越えて手にしていった5月のサクラマス。写真の魚は小ぶりの所謂「小ザクラ」だが、立派に海を越えて母なる川に戻ってきたマスである。
こちらも5月にキャッチした60cmオーバーのサクラマス。早くも薄緑と薄ピンクの婚姻色の下地が銀毛の下にあらわれはじめている。

サクラマスに留まらず、サケ(シロザケ)やカラフトマスもそうだが海と川を行き来するタイプのサケ科魚類には自然由来の長期的サイクルとして好調と不調の波を繰り返すことは古くから知られてきた。

サクラマスの場合には日本海側河川がいい年と太平洋側河川がいい年が交互にやってくるとも言われており、昨年も日本海側河川は良かったので今年はその反対、太平洋側が当初の注目を集めていたが蓋を開けてみれば今年も日本海側河川の方が釣果は良かった。

このように日本海側と太平洋側のサイクルが狂う原因には北海道方面の海からサクラマスの一団が本州に南下してくる際の海水温分布の影響も多大だろう。

4月こそ東北三陸沖の海水温が急降下したがそれ以前はずっと三陸沖に暖水塊の破片が残り実質、冬の間も海水温が高いまま推移していた。

サクラマスは神秘的な魚で、自身の進路に障害となる高水温地域があるとそれらを先読みするかのように的確に察知し回避行動をとる。 これもひとえに進化の過程で獲得した生き残り戦略、進化の賜物なのだろう。

未来に想う、ニッポンのサクラマス釣り。

1尾釣るだけでも多くの困難を乗り越えてようやく手にできるのがサクラマス。本州の河川で降海遡上型サクラマスを釣るにはその難易度MAX級であるが、手にできたときの喜びはまさに計り知れない。

地球規模での環境変化、海流の流れ方の変化がもたらす海水温分布がこれからの時代、サクラマスの遡上状況を左右することは間違いない。

私達トラウティストも常に最新の情報には留意し、的確な判断で河川選び、釣り場選びをおこなうことの大切さを改めて痛感する2025年シーズンのサクラマスだった。

降海遡上型サクラマスを川で釣ることは正直なところとても難しく容易に手にできる魚とは言えないが、釣りあげることができればそれは大きな人生の喜びに変わる。

人を幸せにする魚でもあるサクラマス。

こんな魚と出逢える環境がこれからも永くあってほしいと願うと共に、また来年も。

きっとどこかで感動で手足が震えるような至極の1尾と春の川辺で対峙できることを待ち望んでいる。

TACKLE & EQUIPMENT タックル&装備

使用タックル
ロッド:カーディフモンスターリミテッド各種・カーディフNX-S86M、他シマノプロト
リール:ステラ3000MHG
ライン:ピットブル8+1号(ライムグリーン)、ハードブル8+1号(スティールグレー)
ショックリーダー:フロロカーボン4号~5号、ナイロン5号(他社)
シャローランナー:カーディフMLバレット93Fジェットブースト、他
ミディアムディープダイバー:9cmクラス
ディープダイバー:カーディフフリューゲル99F DRフラッシュブースト、他
スプーン:18g~24g(他社)

カメラ:キャノンPowerShot G7X MarkⅡ、オリンパスTOUGH TG-5

※記事内で紹介されている製品は、旧モデルの可能性がございます。

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