釣行データ
日時:2018年4月12日 5時30分出船・12時沖上がり
エリア:千葉県白間津沖
天候:晴れ
潮回り:小潮(干潮2時53分、満潮9時12分)
水深:165m前後
船宿:松大丸
松田竜也の爆乗り注目ポイント
南房エリアの二枚潮
対処法は高速巻き上げ!?
数年ぶりの好調。イカが乗る潮とは
パラソル級が多くなるヤリイカ最終盤
白間津港より出船。駐車場で集合し、船長が荷物をピックアップしてくれる
黒潮の大蛇行が話題である。紀伊半島・潮岬を離岸して八丈島に近付き、房総半島西沖に接岸する。紀伊半島と伊豆半島の間には冷水塊という冷たい水が渦巻き、多彩な釣りターゲットが不調といわれる。一方の房総沖は比較的黒潮が差しているエリアといえる。スルメイカおよびヤリイカは潮に乗って回遊する。潮流の動きしだいで釣果が大きく左右されるターゲットであることは間違いなく、今冬のヤリイカ乗合は好調だった。
「近年の南房は不調続きでしたが、今年(2018年)に入って震災以降久しぶりの大釣りに沸いたんです。特に3月の第1週はトップ120パイ。同じエリアを延々流しているだけで始めから終わりまでゾロゾロと乗っていました」
そう語るのは白間津港を基地にする「松大丸(しょうだいまる)」山口一夫船長である。しかし好調との報せは少し前の出来事で、チーム沖イカHUNTERの池田暁彦さんと当地を訪れたのは、春爛漫の4月初旬。
「昨日は潮が速くなって、ニゴリが入ったせいでしょう、厳しい状況に一変しました」
と船長。この日の2日前に春の嵐が吹き荒れた。海は大シケ、濁った春の潮になった。「こいつは厳しいゾ」と思いつつ5時に船に乗り込んで、5時30分に出船となる。
今回乗り合わせたベテランは千葉県富津市在住の渡部茂さん。イカ釣り歴40年で松大丸とは20年来の付き合い。このほか埼玉県川口市在住の常連ふたり、中西育雄さん、藤村正男さんコンビと千葉県習志野市から月に一度のイカ釣りを楽しみに訪れるという押田恵一郎さんが釣り座に着いた。
松田竜也の爆乗り注目ポイント
私(松田)の愛用アイテム
この日使用したサオは「ベイゲームⅩイカ直結」。さばきやすく乗りを察知しやすい9:1の極先調子H150。リールは「フォースマスター3000」
ヤリイカのブランコ仕掛けには「ツレヅレ針」を愛用
SS 3Dマリンスーツ
釣り人の動きを徹底的に見つめた「COREACT」設計。汚れをブロックする「スプラッシュシールド」は墨が付いても一拭きでさっぱりきれい
意外だったスルメ日和
朝マヅメはスルメの時合。手繰りで良型のスルメイカを取り込む
私は直結仕掛けをさばく時はツノを束ねて持つようにしている。1本1本重ならないようにするのがキモ
イカ釣りターゲットの中では獰猛でパワフルなスルメイカ。触腕が長くツノをがっちりと抱いてくる
航行20分ほど。到着した白間津沖の潮色は思いのほか澄んでいた。イカが乗りそうな濃紺色である。ポイント水深は170m。サバ反応も多いとのことで14本ヅノの直結仕掛けを結ぶ。「僕は直結でしか釣りませんよ」と言う池田さんも14本の直結。「今日はスルメが乗りそうな気がする」と16cmのツノも多く混ぜていた。一方の常連さんは6本8本と少ないツノ数のブランコ派が多い。というのもヤリイカに照準を絞り、南房の速潮対策である。
南房エリアの沖合いは潮が飛ぶ時はすさまじく速い。おまけに2枚潮になる状況が多々ある。1投目の着底が勝負になることが多く、ツノ数を多くするほど取り込み時にオマツリなどのトラブルになることも多い。
例年なら5月中旬までパラソル級のヤリイカが乗って活況を呈す。それがこの日は1投目から良型のスルメイカがサオを絞った。こうなるとスルメ大好きな池田さんが燃える。
「165mの水深。110mからサワリがあります。15~20mは浮いていますよ」
池田さんは中層でサワリを見て、幅の広いストロークのシャクリと細かいシャクリを織り交ぜて誘い、ポーズで乗りを察知。穂先の微妙な変化をとらえるとジワジワと巻き上げ、ズシンとくる多点掛けを何度も決める。私も3パイ、4ハイと多点掛けが連発。たまにツノに掛かってくるのは丸々と肥えたウルメイワシ。この群れをスルメイカが追い回しているのだろう。常連の渡部さんもスルメイカを乗せまくり、お隣の押田さんはヤリイカを乗せている。どうやらスルメイカの下層にはヤリイカも混じっている。
あまりにスルメの乗りがよく、山口船長はイカ干しロープを張る。池田さんは手際よくイカを開き、瞬く間に船上干しのイカ暖簾を作り上げた。
池田さんはあっという間に船上干しのイカ暖簾をつくる
イカを開く際、カラストンビを捨てるのはもったいない。いくつかを串刺しにして干せば、滋味深い酒の肴となる
松大丸に20年通う年季の入ったイカ釣りフリーク、渡部さんも朝のスルメを快調に乗せる
左舷大ドモ藤村正男さんは67歳。マイペースにイカ釣りを楽しんでいる。今年(2018年)に入ってから白間津沖で78ハイの大釣りを味わい、大満足だったという
イカのベイトと思しき魚群はよく肥えたウルメイワシ
ひとつのツノに2ハイのスルメが抱きついた。「チェリー」と呼ばれる高活性な状況である。釣り人は当連載おなじみの顔となった「チーム沖イカHUNTER」の池田さん
二枚潮に対処する高速巻き
日が高くなるとスルメイカのアタリは落ち着き、今度はヤリイカの時合に突入する。左舷トモの中西さん、藤村さんも丁寧にアタリを拾って連発だ。サバも時おり混じるが、うるさいほどではない。私は10本ヅノのブランコ仕掛けに張り替え、イカとの対話を静かに楽しむことにした。
11時の干潮を境に二枚潮がきつくなった。直結仕掛けの池田さんが「二枚潮の変わり目でイカが外れちゃうんだよな」と嘆いている。直結仕掛けはテンションがゆるむとイカが外れるのが難点だ。底潮が右に飛んで上潮が左になると、その境目では巻き上げ途中に仕掛けが折れ、緩むこともあれば、ツノがひっくり返ってイカが外れやすくもなる。腕が長くツノをがっちりと抱くスルメイカなら取り込みやすいが、ヤリイカの触腕は短く身も軟らかい。ゆえにカンナも抜けやすい。そこで池田さんは電動リールのパワーレバーをできる限り前に倒し、二枚潮の層を一気に通過させる強気の作戦に出る。と、スルメイカはもちろん、ヤリイカもゾロゾロと取り込むことに成功した。
取り込み時に二枚潮の境目を一気に通過させるべく強気の巻き上げで勝負する池田さん
ヤリイカの時合になると4点掛けを達成したベテラン、中西さん
月に1度のイカ釣りが楽しみと話した押田さんもヤリイカを3点掛け
「今年の南房は4月に入っても肉厚なヤリイカが多いんですよ」
とは船長。春のヤリイカといえば産卵を前にペナペナに薄くなった個体ばかりとなるのだが、この日乗ってきたのは、クタッとならず身に弾力があるイカばかり。
終わってみれば池田さんがスルメとヤリを合わせて44ハイでサオ頭。私はのんびり釣って31パイ。爆乗りとはならなかったものの充分に春の海を満喫した。
松大丸では女将さんが食堂も経営しており、釣ったイカをさばいてもくれる。菜の花とワカメを和えたイカ刺しに、麺つゆに浸したゲソとエンペラ、それに甘辛い煮付けをふるまっていただく。とてもアットホームな空間に落ち着き、帰りしな南房の名花であるポピーなど春の花々を土産に持たせてくれた。温かいおもてなしに一同感激しきりの船宿であった。
ヤリもスルメもアグレッシブな取り込みをする池田さん
パラソルはじめ良型のヤリイカがゾロゾロと乗ってくる
渡部さんもスピーディーにツノをさばいた
池田さんの釣友で沖イカ釣りにずぶずぶとのめり込んでいる丸山俊之さんも24ハイの釣果で大満足
食事処「松大丸」で反省会。新鮮なワカメと釣りたてのヤリイカの刺身に舌鼓を打つ
麺つゆに漬けたゲソとエンペラ。コリコリとした歯応えとシンプルな味付けが旨い
ヤリイカの甘さが際立つ煮付けも絶品だった