釣行データ
日時:2017年12月4日 6時出船・12時沖上がり
エリア:千葉県乙浜沖
天候:晴れ
潮回り:大潮(干潮10時51分、満潮5時33分)
水深:170~140m前後
船宿:信栄丸
松田竜也の爆乗り注目ポイント
浮いて群れるスルメと底付近のヤリ
ねらい方の違いを理解して2目釣りを楽しもう
冬の良型スルメイカ ぶっ飛ぶ潮がどうなるのか?
幻想的なスーパームーンを愛でつつ出船
南房乙浜沖のヤリイカといえば、春のパラソルがよく知られる。しかし肉厚のヤリイカを味わうなら年末年始がおすすめだ。空気も冷え冷えとした12月初旬に訪れたのは信栄丸。この日は月が地球に最も近づくスーパームーンが見られ、未明の港を大きな満月が煌々と照らす。
「今シーズンは黒潮の蛇行がひどくて。潮がぶっ飛んだり潮向きが毎日変わる。昨日は西から東、今日は東から西という感じでね。水温が低くなれば落ち着くと思うけど、はたして今日はどうなるかな」
と語るのは松井仁船長。もとは乙浜漁協の職員をしており船長になって11年。イカの産卵期となる5~6月をのぞき、ほぼ周年イカ乗合を看板に掲げている。今回は常連客の山田昭久さん、佐久間基さんと一緒にサオをだすことに。
冬のスルメは概してビール瓶クラスの大型ばかり
ポイントは乙浜から白浜沖。ナギと晴天に恵まれた絶好のイカ日和だ。この時期は朝方スルメイカ、日が高くなってからヤリイカと探ることが多く、どちらの道具も用意したほうがよい。
山田さんの生まれは茨城だ。国鉄職員で昔は車掌をしており現在は内房線富浦駅に常駐している。イカ歴30年のベテランである。
「昔この辺りのヤリイカは12月にならないと釣れなかったんですが、今は8月から混じる。だいぶ海が変わったんだろうね。私の釣りはシンプルですよ。ツノ数も少なくスルメは10本、ヤリねらいでサバが多いと3、4本の時もあります。なにしろ潮が速い海域ですから、最初の1回が勝負になります」
と山田さん。ビール瓶クラスのスルメイカが乗る朝は18cmヅノ10本の直結仕掛けで、愛用リールはシマノ「ビーストマスター3000」。
一方の佐久間さんは38歳、乙浜出身で現在は千葉市在住。私が乙浜を訪れた時には、ちょくちょく釣行をともにする仲だ。イカ歴は5年で相当熱くなっており、直結のスルメイカ釣りが大好き。このほか当連載ではおなじみ「チーム沖イカHUNTER」の池田暁彦さんとその釣友の赤荻奨さんも同船した。
開始早々にスルメイカを7点掛けした池田さんはチーム沖イカHUNTER の中心人物のひとり。当連載ではかなりの割合でご一緒するイカフリーク
池田さん愛用の釣り座アイテムがシマノ「船べりシステムケース」。バッテリーの「電力丸」やスマホ、飲み物などをシステマチックに収納できる。船釣りは快適な釣り座があってこそ手返しもよくなり楽しさが倍増する
月が沈むと朝日が昇る。すぐにスルメイカの反応が出てズシンと乗る。「感度が最高にいいですよ」。手にするサオは「IKA7」の165。低速巻きで追い乗せの駆け引きに集中するのは佐久間さん
「水深170m。サバ反応はないね。底から140mまで探ってみて」
指定のオモリは150号。私は140mでイトを止めて1シャクリでサワリを見る。と、穂先が戻るようなアタリが出てすかさず合わせる。スルメらしい突っ込みが愛竿「IKA7」H150をしならせる。朝日を浴びる右舷側のメンバーはみな乗って重量感のあるモーター音が響き渡る。私と池田さんは早々に7点掛けを達成した。
南房沖は上潮が滑り出すことが多く、こうなるとイトが大きくフケて、アタリも取りづらい。だから山田さんが言うように「着底一発目が勝負」になりやすいのだが、朝の潮は緩くて釣りやすく、流し替えずとも続けざまに乗った。
スルメの反応は濃い。佐久間さんの釣りはアタリを着実に取って1パイを丁寧に乗せる。山田さんは海底まで落とした仕掛けを低速で巻きながら小刻みなシャクリを入れる電動シャクリも多用。それぞれポツポツと乗せているうち、すっかり日が昇りきった。私もスルメを20パイは乗せた。
松田竜也の爆乗り注目ポイント
私(松田)の愛用アイテム
愛竿はシマノ「IKA7」。スルメはH150、ヤリイカは165を使用。ねじれないハイパワーXソリッド&スパイラルXのブランクスは重力を逃さず、オモリがドスンとバットに乗り誰もがしっかりとしたシャクリを入れやすい。感度は素晴らしく小型の乗りも察知
「IKA7」はシャクリの力が抜けず繊細なサワリも分かりやすい
シマノがついにツノを作った「ツレヅレ針」。特大反射面の多面体ボディーがイカを幻惑。5本、7本の完成ブランコ仕掛けもあり
この日のヤリイカ配色パターン。青とケイムラを基調にピンク1本とスッテをひとつ。淡色系のツノが多い
ツレヅレ針は角度にこだわった0.6mmの5本立てカンナをセットし、キープ力が高い。長さは11cmのみでヤリイカに特化
昼からヤリイカ 直結仕掛けは底からズル巻き
ゾロゾロと水面を割るヤリイカ。「ガチャガチャした釣りはしません」と終始落ち着いて仕掛けをさばく山田さん
スルメの中にもヤリイカが混じるようになり、船長が「底反応が出ているからヤリをやりましょう!」とアナウンス。
ヤリイカはスルメイカのように浮き立つ群れが少なく、底付近だけを誘っていれば乗る。サバが少ないことから、山田さんも佐久間さんもブランコ仕掛けに張り替えたが、私はシマノのイカヅノ「ツレヅレ針」(11cm)の直結仕掛けを接続する。ベタナギで船が揺れず取り込み時もテンションが抜けにくい。直結をさばきやすい日和である。サオは軟らかめの「IKA7」165に持ち替えた。
結局サバが回ってきたため直結で正解。ヤリイカは着底直後に乗ることが最も多い。オモリは底に着くと海底に埋まる。余分なイトフケを取り、底からオモリをズボッと引きはがして1mほど浮かせたところで、まずはアタリを見る。イカがツノを抱くとフワフワと穂先が揺れる。この違和感をとらえて合わせて巻き取りに移る。
ヤリイカはスルメイカに比べ、腕が短くパワーも弱い。身切れしやすく巻き取る際の電動速度が速すぎるとバレてしまう。ブランコなら底付近でシャクって落としてポーズの繰り返しでアタリを見たほうが乗りも察知しやすいが、直結の場合は底からのズル巻きでも乗りやすく数も付く。レバースピードは5~10の間でイカの数が付くほどスピードを上げてパワーを付ける。
追い乗せを誘うズル巻きはスピードレバー5~10の間で調整することが多い
私(松田)の場合、直結仕掛けの取り込みはツノを片手に束ねて持つ
池田さんの釣友、赤荻奨さんも3点掛け。近年イカにハマりまくっている
10時を回ったころからヤリイカの4点掛けを2連発して数を伸ばした山田さん
山田さんのツノ数は少ない。サバが多い時は4本、多くても8本程度
山田さんは長年の実績からツノの配色が決まっている。一番下がケイムラもしくは薄いピンク、続いて下からグリーン、ピンク、赤白スッテ。この繰り返しで8本ヅノにする。
「水深200mから少しずつカケアガってくるから気をつけて。底反応もしっかり出ているよ」
船長のアナウンスで引き締まる船内。すると各所で着乗りである。時合が訪れたらしく山田さんが4点、佐久間さんも3点、と多点掛けを連発させ、各所でヤリイカがゾロゾロと浮上。「10m上まで反応がある」と船長が言う。
この場合は浮いている活性の高いイカをねらうのが効率的。タナに来たところでピタリとイトを止め、反応を見るとすぐに触わる。これをしっかり合わせて巻き上げれば、1パイ、2ハイ、3ハイと身の透き通るヤリイカが水鉄砲を吹きながら水面を割った。
透き通る身のヤリイカは美しい。ねっとりとして甘い食味も最高!
サメに仕掛けを取られる場面もあった池田さんだが、良型ヤリイカを着々と手にしていた
「これは付いてるよ~」
とトモの池田さんが快哉を叫んだ。サオの曲がりからして、ヤリイカだとすれば相当数が付いている。しかし巻き上げ途中でガツンと衝撃。サオから負荷が消えてしまった。サメにやられたのだ。南房沖の高水温期はサメとの戦いになることも。まだ海は冬になりきっていないのだ。年末年始を迎えるころは水温もぐっと下がる。サメも消えヤリイカの盛期となる。
底から10m上の反応に合わせるとすぐにサワリが出る。サバが少なくなったのでブランコ仕掛けに替え着実に1パイを取ることを心がけた
佐久間さんもヤリの時合に3点、2点を連発して26パイ。スルメと合わせて42ハイ
3点掛けの赤荻さん。「スルメにヤリに楽しい1日でした!」とこの笑顔