釣行データ
日時:2017年9月19 6時出船・12時沖上がり
エリア:千葉県勝山沖
天候:晴れ
潮回り:中潮(干潮10時15、満潮4時)
水深:150m前後
船宿:利八丸
GUEST
藤村弘(ふじむら・ひろし)
勝山港利八丸を常宿にするベテラン。出身地の北海道では川釣り、仕事の都合で千葉に引っ越してから沖釣りに勤しんでいる。イカ釣りではいかにして手返しを速めるかにアイデアを凝らし、自作の特製ナワバチを愛用。
松田竜也の爆乗り注目ポイント
手返しアップのアイデアと
追い乗せの技術で朝から爆乗り!
ベテランの改良ナワバチ
手返しを速める独自のナワバチを使って数を伸ばす藤村さん
2017年7月、当連載で登場したエキスパート数名と「チーム沖イカHUNTER」なる会を立ち上げた。イカ釣りの面白さを知ってもらい、この釣りを盛り上げたいと意気込んで、講習会などのイベントを行なう会だ。一員である池田暁彦さんが「ナワバチに面白い工夫を凝らしたベテランがいる」と紹介してくれたのは、勝山港利八丸を常宿にするベテラン、藤村弘さん67歳。
藤村さんは北海道出身。若い頃は知床の大自然に魅せられてイトウ、カラフトマス、オショロコマといった川釣りを楽しんだそう。仕事で千葉に越してからは、もっぱら海釣り。マダイ、オニカサゴと沖釣りに精を出し、還暦を過ぎてからイカ釣りにハマった。
「イカの魅力、そりゃあ多点で乗せた時の興奮です。ズンズンくる重量感がたまりませんよ」
そう話す藤村さんは手先が器用。サオ、中オモリ、イカをさばく船上用ぺティーナイフと多彩な道具を自作。そのひとつにナワバチがある。ナワバチ=縄鉢とは、もともと手釣り時代のイカ釣りで用いられた底の浅いコンテナのこと。中にツノや手繰りのイトを放り込み、取り込み時の手返しを速めてトラブルを防ぐ。
チーム沖イカHUNTERの池田暁彦さん。チャーターボート「アイランドクルーズ」の船長で横浜でシーバス&クロダイ釣りのガイドをやるかたわら、カワハギにイカとほぼ毎日海上に繰り出すエキスパート
朝イチから快調に飛ばす藤村さん。樽のようなスルメを次々に乗せて4点掛けも楽しむ
枝スを出してツノを結んだ「ブランコ仕掛け」は回収時にツノを1本ずつ投入器に入れないと手前マツリを起こす。一方ツノを幹イトに直結する「直結仕掛け」はナワバチに放り込んでもトラブルは少ない。とはいえ、ナワバチの中でツノを何本も重ねればイト絡みは生じやすい。
連載では直結仕掛けの手繰りを何度もクローズアップしているが、その方法はいくつかある。1ヵ所にツノが重ならないように、またイトが交差をしないように上手く散らしてデッキに置くエキスパートもいれば、私のようにツノを手に束ねて取り込む人間もいる。一般的なのはツノ掛けマットに引っ掛けながら行なう取り込みだ。藤村さんの取り込みはある程度の数のツノ(主にイカが付いたツノ)はナワバチの中に投げ入れ、あとは順番にナワバチにセットされたマットに掛ける。このナワバチのツノ掛けマットが秀逸なアイデア品。マットを貼り付けた板は写真のような開閉式。
藤村さんは開閉式ツノ掛けマットをナワバチ側に倒し、マットに対しカンナの先を沖に向かって引っ掛けながらイカを取り込む。そして投入時はツノ掛けマット起こす。と、カンナの先が下を向く。カンナにはカエシはない。この状態でオモリを投げれば、その勢いでツノが自動的にマットから外れ飛んでいくというわけだ。
イカ釣りは手返しが命。それを速めるために腕を磨き、こうしたアイデアを絞る。とても面白いと思うのだがいかがだろう。
松田竜也の爆乗り注目ポイント
藤村さんの自作アイテム
取り込み時はマットにこのようにツノを掛け……
投入時はマットの板を起こす。オモリを投げれば自動的にカンナが外れてツノが飛ぶ
イカをすくうネット
船上さばき用のペティーナイフも自作
シケ後の大当たり?
探見丸に映るのは海底から50m以上も立ち上がる群れ。こうした厚い群れの反応があれば、サワリのあるタナから海底までの間を落とし込んで探る
さて実釣のようすを振り返っていこう。内房の代表的なイカ船基地のひとつ勝山港。これまで連載では2度取り上げており、新盛丸、萬栄丸が登場し、今回の船宿は利八丸である。創業約37年、スルメイカとヤリイカの端境期となる10月以外ほぼ周年イカ乗合を看板に掲げる。この日は9月下旬で台風一過の秋晴れ。河岸払いして間もなく舟宝康弘船長は「シケ後は博打です。大釣りか大外れかのどちらかです」と話す。水温はシケ前に比べ少し下がったようだが潮色は濃紺で悪くない。この時期は朝マヅメにスルメイカ、日中はヤリイカと探ることが多く、ポイントは朝のうちは洲崎沖、日が高くなってから白浜沖がお決まりのコース。この日の洲崎沖の魚探反応は良好で、最初の流しで探見丸に映し出されたのは、水深150mの海底から50m以上も高く沸き立つ群れ。
藤村さんの愛用リールはシマノ「フォースマスター6000」。昔は大型スルメイカを多点で掛けるとオーバーヒートするリールも多かったというが、10点乗せても安心して使えるパワーがあるという
愛竿シマノ「IKA7H150」を秋空に突き上げて乗りを聞く池田さん。と、ティップがズシンとお辞儀する。低速巻きで追い乗せの駆け引きがスタート!
オモリ150号。藤村さんはグラスソリッドを削って作った150cmの自作ザオにシマノ「フォースマスター6000」をセット。「サオは短いほうがシャクりやすいし、疲れにくい」と言う。ツノは18cmで数は9本。
「スルメシーズンも終盤ですから移動が速いと思うんです。1流しで1、2ハイの乗りなら、ツノ数は少なくしたほうが手返しもいい。渋い時は6本まで少なくします」
そう言う藤村さんは毎釣行、テーマを決めて釣りをする。たとえば落とし込みだけで乗せる、電動シャクリを1日やるといったぐあいに引き出しをひとつひとつ増やしているという。この日は1パイのアタリを丁寧に釣ると言って一投目。着底間もなくアタリをとらえると、重量感たっぷりの電動リールの高音が響き渡る。隣の私も左舷側でサオをだす池田さんも乗せる。どうやらシケ後の大外れはなく、大当たりになりそうな予感。
藤村さんはコンスタントに乗せる。朝の時合で4点掛けもあり6時40分までにツ抜けを達成。いずれのスルメイカも太くてパワフル。サオを気持ちよく曲げていく。藤村さんに追い乗せのコツを聞くと「乗りを察知したところでテンションを緩めないように、1mくらいの上下幅でサオを2回ギュギュッとシャクります。さらに重さが乗ったところでパワーレバーを10くらいの速度で回収します」と答える。
分厚い群れは上から探る
イカを取り込んではちぎりバケツに投げ込む。まさに漁のような機械的作業ながら、アドレナリンがドバドバと出るのがイカ釣りである
終了間際の5点掛けに目を細める
日が高くなるとスルメの反応はまばらになり、単発的な乗りになる。そこで船長はヤリイカねらいに切り替えたが、小型すぎるのかイマイチな乗り方だ。再度スルメの反応を捜してしばらく経つと爆乗りタイムがやってきた。
「水深198m、100mくらいから反応が出ています。広く探ってみてください」
船長のアナウンスが流れて乗客一同引き締まる。このように泳層が厚い群れをねらう時は落とし込んでいる最中からサワリを逃さないように注視する。シマノのリールは落下速度を速めるイト送り機能が付いているが、私の場合カウンターを見て反応のあるタナの10mほど前からイト送り機能を停止する。イカが触ると落下中のイトがバチっと不自然にフケる。こんな変化をとらえたら緊急停止。サワリを見ながら徐々に海底まで落とし込んでいく。
11時を回ると左舷の池田さんが連発モードに突入した。4点、5点、そして9点掛けを決めた。私も同じタイミングでズシンとくる多点掛けに成功。次々にスルメイカが躍り出る8点掛けである。
ミヨシに張られたロープには釣りたてのスルメイカの船上干しが所狭しと並ぶ。そのほとんどが藤村さんと池田さんが釣りあげたイカ。沖上がりは12時。最後の流しまで船中各所でアタリが出続け、藤村さんは45ハイ、池田さんが51パイ、私が52ハイでサオ頭になることができた。10月末ごろになると洲崎沖はスルメイカは終了し、ヤリイカが本格化。実に楽しみである。
爆乗りタイムに池田さんは9点掛け
ミヨシのロープには船上干しのスルメがずらり。澄んだ秋の空気にカラリとした太陽、潮風がよい仕事をしてくれる
藤村さんのツノに付いたオアカムロアジは刺身が旨い。スルメの群れがいるところには小魚が群れなしてイカだけでなくサバも多い。これらの他魚を避けるためにも直結仕掛けが有効になる
太いスルメが8点も乗ればサオとリールは唸りを上げて腕はパンパン。心地よい疲労感に浸れる