釣行データ
日時:2017年6月6日 6時30分出船・14時沖上がり
エリア:神奈川県小田原沖
天候:曇り
潮回り:中潮(干潮8時42分、満潮15時26分)
水深:120m前後
船宿:おおもり丸
GUEST
安藤信良(あんどう・のぶよし)
秦野市在住、イカ釣り歴40年の大ベテラン。プラヅノがない時代から手釣りでイカ釣りを探求している。
松田竜也の爆乗り注目ポイント
曇天ベタ凪のスルメ日和。
1投目から爆乗り!
下から上のタナ探りでは釣れない時代
手さばきの速い常連さんが多いおおもり丸
おおもり丸常連の安藤信良さんの手によって次々と船中に放り込まれるスルメイカ
腕が長く、遊泳力の強いスルメイカは強烈なジェット噴射が特徴。型がよくなると腕がパンパンになるほど引く
ヤリイカシーズンの終幕とともに初夏からはスルメイカが熱くなる。初期はムギイカ(スルメイカの小型)も多く混じるが、スルメは小型ほど身が柔らかく甘みも強い。刺身や沖漬けが非常に美味だ。
今回訪れた小田原沖といえば私がイカ釣りを始めて最初に衝撃を受けたエリア。「すげえ人たちがいる」と釣り人のレベルの高さにびっくりした。とにかく手返しが速い。特に直結仕掛けを鮮やかにさばく常連さんが目立ったのだ。
6月初旬、スルメイカの釣果が上向いた早川港「おおもり丸」を探訪した。瀬戸清光船長が操船するスルメイカ船は平日にもかかわらず満員御礼のにぎわい。なにしろイカ船を始めて約35年になる老舗だ。瀬戸船長は言う。
「10年ほど前は電動シャクリという釣り方が流行っていました。1.2m程度の短いスルメザオを使って、シャクリながら電動の中速巻き上げを行なう釣法です。現在はイカの足が速く、最初にタナをピタリと合わせなければ釣れません。釣り方が昔よりも繊細になってきました」
電動シャクリは私も昔はよく見た釣法。シャクリながら巻き上げるためテンションが変わるたびにウィンウィンとモーターが唸りを上げる。この音が船中各所で響いていたのを思い出す。着底させて数十メートル上のタナまで下から上に探る釣り方で、タナ合わせはアバウト。20年ほど前に比べ、現在はイカの群れに厚みがない。そのせいか下から上のタナ探りでは追いつかず、上から下に向かってタナをピタリと合わせなければ釣れにくくなった。
同船した今回の常連さんは神奈川県秦野市に住む安藤信良さん。イカ釣り歴40年になる68歳の大ベテランだ。「プラヅノがこの世にない時代からイカを釣っていましたね。当時は竹串にカンナを付けてガス糸を巻くんです。これを自分で何本も作って。電動タックルなんて当然ない。手釣りですよ」と穏やかに語る。
電動ズル引き誘いのシンプル釣法
柔軟ザオを使って電動の低速巻き。シャクらなくても充分な釣果は出ると安藤さん
安藤さんのタックルはシマノ「ビーストマスター3000XS」に穂持ちまでしなやかな軟調ザオを組み合わせる。スルメ、ムギ、ヤリ、マルとイカはすべて同じサオだという。ツノ数12本の直結仕掛けに、オモリは120号が船宿指定だ。釣り方は極めてシンプル。
「スルメはズル引き。タナの間を落として電動で低速巻き上げを繰り返すだけです」
つまり船長の指示ダナに仕掛けを落とし、後は低速の電動巻き(約10速)でじっくりと10mほど巻き上げる。シャクリなどサオのアクションは入れない。イカは落ちてくるエサに反応しやすい。最もよく乗るタイミングは最初に落とし込んだ時で、イカの目の前にツノが落ちれば即座に抱く。イカは最初に見つけたエサに執着しやすく誰よりも速くタナに届けたほうが乗る確率は高い。安藤さんの釣り方は最初の落とし込みで抱かせるイメージ。その後の低速巻きで追い乗りを誘う。常にテンションが掛かっているので乗りを察知しやすく、直結でも外れにくい。ちなみにシャクリを入れない巻き上げ誘いは私もよくやる。ツノが上下に躍るよりも乗りのよい状況を多々経験している。
朝イチの時合を逃さず6点、7点と多点掛けが連発
直結仕掛けの取り込みはテンションを抜かないことが最重要。イカの取り込みは勢いを付けて船内に引き入れ、外す時はをツノを下げてカンナの先を下に向ける
最初のポイントは真鶴沖。名勝「三ツ石」の沖合である。水深は90m。
「間に合うかな、70~80mの間でやってみて」
とは瀬戸船長。ベイト反応を見てイカのタナに見当を付ける。スルメの動きは速く、時に「運動会」と言って追いかけっこの時間もある。スルメイカの場合はローライトな早朝ほど活性が高く、晴天よりは曇天、しかも小雨が降るくらいの空模様だと爆乗りしやすい。また直結仕掛けを扱うため海況はナギのほうが取り込み時に外れることも少ない。この日の朝はまさにスルメ日和で、暗い曇天のベタナギであった。
1投目、自分も安藤さんもさっそく乗りを察知した。小型のためモーター音の唸りは低い。巻き上げればゾロゾロゾロと6点も付いて来た。安藤さんを見れば4点掛けで船内に続々とイカを放り込んでいる。再び仕掛けを落とし込めば、今度は7点掛けである。1回目の流しだけで船内は大いに盛り上がる。
松田竜也の爆乗り注目ポイント
安藤さんのこだわり
必ず付ける中オモリは投入器からツノがこぼれ出るのを防ぐため
安藤さんは12本ヅノを操る。黄緑など派手なカラーを1本混ぜるとスルメに効果的という
安藤さんは指サックをせず農業用のラバー手袋をはめてサオを構える。このほうが滑りにくいという
私(松田)の愛用アイテム
配色パターンはこんなぐあい。ほとんどブルーとケイムラでまとめ、真ん中は1アクセントでピンクを1本
中オモリは使わないが水中ライトを付ける。威力を実感するシーンは多い
リールはシマノ「フォースマスター3000XP」。探見丸搭載船で使用すると水深が表示されるのが便利だ
ロッドスタンドは「ブイホルダー」。万力とは別にあるV字状のスタンドが船べりに密着して安定する。スルメイカの多点掛けなど、高負荷のかかる状況下もロッドがグラつかない。収納時はV字の足をたためてコンパクトに収納でき、ホルダー部分を起こすと首を振る
水深120m、タナは50m
乗ったイカはツノごとコンテナに放り込んでいくのが安藤さんの取り込み
私の場合、直結ヅノは手に束ねる。クロスしないように束ねていくのが手前マツリをしないコツ
イカ釣りは釣り座をシステマチックに整頓し、手前マツリをなくすことが肝要だ。安藤さんの釣り座は座席にコンテナを置くのが特徴的。取り込んだイカをツノごとコンテナに放り込み、イカのいないツノは投入器に貼られた布(カーペットの切れ端)に引っ掛ける。こうするとツノが重なりにくく手前マツリをしにくいのだという。
安藤さんは必ず中オモリ6~15号をセットするが、これはツノを躍らせる目的ではなく、投入器に納めた仕掛けの飛び出し防止として機能する。風にイトがあおられるとツノが吹き上がって飛び出てしまうのだ。中オモリは軽いほどいいが、風の強さしだいで大きさは調整する。
さて、モーニングの爆乗後は潮が緩くなりイカの活性も低下する。単発乗りで腕の差が出る状況だ。安藤さんをはじめ、ミヨシ付近の常連さんは乗せる。が、それより後方はあまり乗っていない。昔から思うことだがイカ船は前と後ろで世界が異なる。前方ほど船の揺れは大きく、取り込みは難しいが大量釣果をあげる手練が多いのである。
この日のスルメ船は7点掛けの多点をはじめ終日乗って松田さんが70パイ。サオ頭になった
最後は5点掛けもあり盛り上がった
「イカ釣りはエンターテイメントです。もう一発くらい盛り上がりをつくりたいですね」
と瀬戸船長は言う。真鶴沖に集結していたイカ船団は散り散りになって運動会。おおもり丸は「西沖」と呼ばれる湯河原沖に移動した。ちなみに周辺エリアで最も沖合の初島付近は「南沖」と呼ばれる。さて、どこで盛り上がるだろうか。
「水深120mで40~50mまで浮いています」
と船長が指示するようにスルメイカはかなり浮く。13時を回ったころ分厚い反応が出たようで船内各所で多点乗り。にわかに活気づく。私も集中してシャクリ、穂先がパタパタと揺れるアタリを何度もとらえる。低速巻きで追い乗せを誘うとズン、ズンと重みが加わって5点掛け。安藤さんも連発した。最後の1時間は活況で満足の1日となった。
小型のスルメは沖漬けが最高。乗せたそばから漬ダレにポンポン入れるベテランも多い。ちなみにこのタレは醤油、酒、味醂を1:1:1の割合で混ぜ、少量のだしとトウガラシも混ぜ込む
晴れたら船上干しがイカ釣りの定番。太陽が旨味を凝縮させる