釣行データ
日時:2016年9月27日 5時出船・12時沖上がり
エリア:千葉県勝山港
天候:晴れ
潮回り:中潮(干潮8時11分、満潮15時14分)
水深:140m前後
船宿:新盛丸
GUEST
永井英夫(ながい・ひでお )
東京都品川区在住。イカ歴19年。勝山をはじめ、長井、乙浜などでイカ釣りを楽しむ。新盛丸船長が「来るたびにサオ頭になる」という凄腕。私もこれまで何度かサオを並べたことがあるが、普通では引っ掛けられないイカをことごとく乗せるワザをもつ。
松田竜也の爆乗り注目ポイント
仕掛け投入中のサワリを見逃すな!
サバの中にスルメがいる
筋肉質で肉厚な腕を持つスルメイカ。水の噴射力も強烈なので取り込みに体力を使う
サバはイカ釣りの定番外道。相模湾や沖の瀬など多くのポイントはサバの下にイカが多いが、南房ではサバの群れの中で当たることも少なくない
内房勝山港「新盛丸」はイカ乗合の看板を約40年掲げる老舗だ。メインの釣り場は南房エリア。洲崎を周り込んですぐの「川名」前から「白浜」沖にかけて。周年イカが回遊し秋は大型のスルメイカがメインでヤリイカも混じる。
「9月下旬になってごっちゃり反応が出ています。上手い人で大型スルメが50パイ以上。イイ感じに乗っています」
と話すのは艫井正悟船長である。
秋~冬はスルメイカの産卵期。胴長30~40cmの大型ばかりが7点、8点、時に10点と数乗ることも多い。ツノに掛かったスルメイカは長い足をいっぱいに広げ口から猛烈な水鉄砲を吹き出す。取り込み時の抵抗は半端なく、多点掛けになるほどサオもリールも唸りを上げる。爆乗りした日には腕はパンパンで身体はボロボロだ。
さて、今回同船したエキスパートは永井英夫さん。船長が「来るたびにサオ頭になる」という東京都品川区在住の38歳、イカ歴18年。これまで何度かサオを並べたことがあり、引っ掛けられないイカをことごとく乗せる凄腕だ。まずは南房エリアの特徴を聞いてみた。
「イカがサバの中にいることです。普通はサバの下にイカがいますが、南房はサバのタナに仕掛けを止めてもよく乗ります」
と話す。サバはイカ釣りの税金みたいな外道だ。横走りしてオマツリを引き起こす厄介者。そこで直結仕掛けである。図のようにツノを枝スに結び付けず幹イトで直結する仕掛け。サバが外れやすく、トラブルも少なく、高感度で手返しも速い。ただしテンションを抜くとすぐにバレてしまうのが難点だ。それでも直結仕掛けを使うイカマスターは多く、永井さんもそのひとりである。
鉛ヅノの効能
永井さんは中オモリ20号をセット。その役割は仕掛けを真っすぐにし、かつツノを踊らせやすくすること
永井さんのプラヅノパターン
17本ヅノを愛用。上から7つ目は6~8匁の鉛ヅノを混ぜている。プラヅノは18cm
大型のスルメにねらいを絞るとツノのサイズは18cm。永井さんのツノ数は17本と多めである。理由は明快。「一投で多くのイカを乗せたい」のだ。とりわけ南房エリアは一流し目で乗ることが多く、群れの足も速い。
船長は「二枚潮がきつい」とアナウンス。二枚潮とは上潮と底潮の流れの向きが反対になることをいい、こうなると仕掛けが真っすぐに立ちにくくアタリを取りづらい。そこで私の対策はツノ数を10本程度と少なくし潮に取られないようにする。一方で永井さんはいつものとおり。さほど気にしてはいない。その仕掛けの特徴は真ん中付近に6~8匁の鉛ヅノを混ぜることだろう。
「鉛ヅノを混ぜると仕掛けは躍りやすくなります。ツノはルアーと一緒で動かさないとイカが反応しにくい。鉛ヅノは重く、プラヅノよりも速く落ち、動かせば仕掛け全体がイレギュラーな動きをする。これが誘いになるんです。それと鉛ヅノが落ちている時は前後のプラヅノは横を向くと思うんですが、横になったツノはイカが抱きやすいと感じます。ブランコ仕掛けは低活性時に効きます。理由はやはりツノが横になっているからでしょう」
そう話す永井さんのイカ釣りの原点は手釣りにある。イトは太く200号のオモリに中オモリも30号と重い。そして当時永井さんが知りあった手釣りのエキスパートは鉛ヅノを5、6本混ぜていたそうで、そのほうがツノは動きやすいと聞いた。これを永井さんも実践しているのだ。
ツノのカラーのこだわりを聞いてみると鉛ヅノは定番の赤白が多く、プラヅノはケイムラ、ピンク、ブルーの順に並べる。つまりさほどこだわりはない。前号でも書いたが私もツノの配色は釣果にさほど直結しないと考える。イカを乗せるにはもっと大事なことがある。
松田竜也の爆乗り注目ポイント
ネバネバ追い乗せ
探見丸で見る朝イチの反応は底周辺。川名前の148mライン
ツノも仕掛けも投げ込むように取り込む永井さん。乱暴なようでいて手前マツリをさせないようにツノを重ねて置かないように注意している
午前5時に出船。洲崎付近までくると台風の影響かウネリがあった。前日の好反応が消えたせいか船長は何度も旋回。ようやく船が唸りを上げ止まったところで探見丸を確認する。水深148mの底から10m上まで反応が出ている。一投目、オモリを投げ込む。着底とほぼ同時に「乗った!」と永井さん。
「3本はついてそうですよ(笑)」
と永井さんが言っている間に自分にもヒット。強烈な引き込みにサオを支えるのが一苦労。しかしシマノ「ビーストマスター3000XS」の巻き上げは軽快。永井さんは予告どおりいきなりの3点掛け。移動してからの2投目も4ハイ。3投目は2ハイと3打数3安打。乗り乗りである。
「1パイ付いたら、そのタナから10~20mくらい上までツノをゆっくりと見せる。群れの厚いタナでネバネバさせるんですよ」
永井さんの言う「ネバネバ」とは追い乗せの誘いである。電動の巻き上げ速度はシマノのリールで8~10。1mずつサオをシャープにリフトさせては下げるのだが、サオを下げる時は巻き上げ速度を2段階ほど速くする。
「活性のよい日は低速に巻き上げているだけで追い乗りしますが3点4点とイカが付いた時に巻き上げスピードが落ちてテンションが抜ける気がします。だからサオを1m程度鋭くリフトしスピードに段差を付けます。これは追い乗せしたイカをアワせる意味もあります」
私も朝から好調だったが、永井さんのほうが数を乗せた。ツノ数が多いことも好釣果の理由だろうが、アタリダナをしっかり把握しているのだ。
「仕掛けを落とし込んでいる時は集中します。PEがフケる瞬間があるのですが、それはイカのサワリと判断します。サワリの出たタナから10mほど仕掛けを下げて止め、そこから上に探っていきます」
探り方は鋭くシャクった後でオモリをストンと落とすのだが、この時にオモリの落ち方に違和感があるとサワリであることが多い。たとえば落ちていくはずなのにイトフケが大きくなるなどの変化である。そしてオモリがぶら下がった後で穂先がフワフワと揺れるのが本アタリ。これアワせていく。
スルメイカは中層で当たることが多く落下時のサワリも注視する
オモリを投げ入れ、直結仕掛けを送り込む際はツノ(カンナの下側)1本1本を手の平で受け止めてから送り出してやる
「7点以上は付いてる重さですよ」と歯を食いしばってサオを支える永井さん
右手にスルメイカ、左手はヤリイカ。10月下旬ごろにはさらにヤリイカの回遊が多くなるだろう
午前9時過ぎ、白浜沖に移動すると水色が紺碧に変わった。周辺は高水温期にサメが多く過去には取り込み寸前のイカに1m以上もあるサメが喰らいついてきた。川名前に比べ乗りのペースは悪くなったが、スルメイカのサイズはさらに大型化。そのうち永井さんの剛竿がギシギシと軋む。
「今日イチで乗っていますよ! 7点以上はあるな」
水深は170m。永井さんの愛用リールは私と同じく「ビーストマスターXS」。GIGA-MAXMOTORはその名のとおりパワフル。多点で乗せたスルメイカとの距離を難なく縮めていくのである。海面まで電動で巻き上げてからは手で船内に引き上げる。ここからは腕力勝負。永井さんは1パイ、2ハイとツノからツノを手繰る。見るからに重そうだ。そして上から4つ目のツノを手にしたところで「バキン!」と鈍い音。なんとイカの重さでプラヅノが真っぷたつに折れたのだ。切断された下のほうは海底に落ちる前に素早くキャッチしたものの、付いたイカはすべて外れた。
「うわあ! もったいない」
と苦笑いの永井さん。そしてこの後は目立った多点掛けはなくポツポツの拾い釣り。そのうちヤリイカが混じるようになった。サワリが小さく乗りきらないヤリイカと思しきアタリが出る。しかし18cmのツノでは大きすぎる。ヤリイカねらいなら11cmが標準。それでも数ハイは乗せることができた。
やがて沖上がりの時刻になった。サオ頭は33ハイ。やはり永井さんである。2位は30パイ。ウネリの影響か爆発的な乗りがなかったのは残念だったが、大型スルメの引きを味わい心地よい疲労感が残った。最後に永井さんにイカ釣りの魅力を聞くと「多点掛けの興奮です。私が初めてやった釣りはカツオの一本釣りで、このとき狩猟本能が強烈に刺激されたのです。イカも同じでゾロゾロと上がってきた時の興奮、周囲より多く乗せられた時の優越感ときたらありません」とのこと。
イカ釣りの心臓は電動リールにあり!
2人が使用したシマノ『ビーストマスター3000XS』の巻き上げ力は69kg。大型スルメイカの20点掛けも想定し、30kgオーバーのマグロ、泳がせの大もの釣り、300号オモリの超高負荷な釣りにも対応する。パワーだけでなく毎分215mも巻き上げられるスピードを兼備。
スプールにモーターを内蔵している構造(スプールインモーター)を採用しスプール径が大きく、巻き上げもイト落ちも実に滑らかで安定感がある。さらにはスプール内部の適所にS A-RBベアリングを配置。わずか3gの低負荷で回転する「ファイアマッハシステム」を搭載し圧倒的な速さでねらいのタナに仕掛けを到達させられる。