「よく動くチャターが欲しいんだよね」から始まった話

新しいルアーのアイデアは意外とフィールドでの何気ない会話から始まることが多かったりします。
今回のチャターベイトも、そんな話。
「チャターって釣れるよね」
「うん、釣れる」
現場でボルゾイ160SPのテストをしていた時の話。そんな何気ない会話から始まったんですが、そのあと黒田さんがこんなことを言いました。
「自作でも作ったりするんだけどさ、よく動くやつが欲しいんだよね」
そのときは正直、よく動くとは?と思いました。
なので、そのまま聞き返してみます。
「よく動くって?どういう意味で?」
すると返ってきたのは、
「ハイレスポンスなやつ。近距離でもちゃんと泳ぎ切るとか、着水してすぐ立ち上がるとか。いわゆるハイピッチな感じ」
という答え。
なるほどな、と。
でも同時に、それって近距離で使うため?とも思ったんです。
すると黒田さんはすかさず、
「距離の話じゃないんだよ。」と。
「レスポンスが良くてちゃんと動くなら、近くでも使えるし遠くでも使えるでしょ。大事なのはアクションの質」
なるほどなと。チャターを考えると、ついアピール力とかサーチ能力とかに目が行きがちなんですが、黒田さんが求めていたのはそこじゃなかった。
巻き始めた瞬間からブルブルと立ち上がること。
短い距離でもしっかり仕事をすること。
アングラーが思った通りに反応してくれること。
そんな"気持ち良さ"に近い部分でした。
ただ、その話を聞きながら別のことも頭に浮かびます。
「でも、世の中にはもう良いチャターベイトがたくさんありますよね?」
実際、チャターベイトというジャンルはすでに成熟している。
定番も名作もある。
わざわざ後発で出す意味があるのかという話です。
すると黒田さんはこう言いました。
「それはそう。だからこそ、明確な性能差とか使い分けの理由がないなら出すべきじゃないと思う。実際必要だと感じたから自作でブレード(チャター用の板)も作ったし」と。
この考え方には強く共感しました。
既存製品で十分なら、それでいい。無理に製品を増やす必要はない。そこで、既に世にあるものを作っても自分たち都合でしかないから。
でも、本当に今までにない価値を生み出せるなら挑戦する意味はある。
シンプルですが、ものづくりとしてはすごく大事な考え方だと思います。
その日の会話の最後は、
「まぁ、ちょっと考えてみます。」
という何とも曖昧な返事で終わった気がします。
もちろん、その時点ではネタも形もありません。
ただ、
「もっとハイレスポンスなチャターが欲しい。」
という現場のリアルな声だけは確かにありました。
案外そういう会話の中にこそ、新しいルアーの種が隠れてます。
その後は、開発担当者とこんな話が合って、なんかできないかなあ、くらいの会話をしながら各々が頭の片隅に「ハイレスポンス」というワードだけがある状態で日々の業務をこなしていました。
そんな、フィールドでの何気ない雑談。
次回は、その会話から生まれた1発目のプロトモデルの話でも。。