活きたサイマキやハゼを泳がせて狙う東京湾のマゴチは、近年ルアーのターゲットとしても人気が高い。しかし、数釣れる魚ではないため、オデコになることは珍しくない。60cmを超えれば良型と呼ばれ、70cm級を見ることはまれだ。そんな「レア感」があるマゴチだが、今年は早いシーズンから好調の気配がある。上級者ならツ抜けすることが珍しくなく、入門するには最高のタイミングかもしれない。
金沢八景出船
この釣りはポイントになる点がいくつかある。まずはエサ付け。貴重な活きたサイマキを、弱らせないように装餌する必要がある。死んだエサは喰わないため、最初の重要なポイントになる。
次はタナ。マゴチがエサに気が付く水深にエサをセットする必要があるので、刻々と変わる海底に合わせてこまめなタナ取りをする必要がある。最後に前アタリ〜アワセ。一気にガツンと喰いつき、向こうアワセで掛かる魚とはまるで逆。エサをくわえた前アタリから始まり、竿に重量感が乗る本アタリまでのかけ引きが醍醐味。また、その硬い口にハリを貫通するには思い切りいいアワセが必要だ。うまくハリが掛からないと巻上げ途中でバラしてしまう。といって、2回、3回の追いアワセも逆効果で「一撃必釣」でフッキングさせることが求められる。
松本さんの竿はゲームロッド「ライトゲームSS TYPE73 M190 RIGHT」。マゴチ専用竿はあるが「東京湾の釣りはだいたいこれでカバーできることを見せたい」と、あえてこの竿をチョイス。ライトゲームCI4+がカーボンソリッドなのに対してグラスソリッドになっており「喰い込み優先ならカーボンより有利」と松本さん。組み合わせたリールはフォールレバーが付いた「バルケッタFカスタム 150DH」。この組み合わせで「ずいぶん久しぶりだなぁ」というマゴチに挑んだ。
最初のポイントで50cm級
出船は午前7時ごろ。風が強い予報だったので、影響が少ない場所から攻めていく。まずは八景沖から探っていくことに。しばらく流すもアタリはなく、やがて移動のアナウンス。船中で「今日は厳しいのでは」という重い空気が流れ始めたとき、それを切り裂くように松本さんが鋭いアワセ。胴から曲がる竿を見て、船長がタモを持って駆けつける。無事、船中に取り込まれたのは50cm級だ。
あとは続かず、千葉県側へ大きく移動。するとポツポツではあるが、本命が取り込まれ始める。アタリは胴の間〜トモ寄りに多く、ミヨシの松本さんにはなかなかチャンスがない。やっと来た魚は仕掛けの回収中に喰ってきてアワセが効かず、フッキングに至らない。その後も飲まず食わずで竿先に集中するが、この日のアタリは3回のみだった。
午後1時ごろになると、急速に風が強まってくる。船長は「申し訳ないですが、もう少しやったら早上がりしましょう」とアナウンス。「最後の流しか」と気合は入るが、その5分後、さらに風は勢いを増して立っているのがつらいほどの爆風に。「これはもう釣りどころではないですね。急いで戻ります」のアナウンスで納竿になった。
高い集中力でチャンス逃さず
悪条件のなか、さすがの腕と集中力で少ないチャンスをものにした松本さんは「いやー、厳しかったけどなんとか釣れてよかったよ」と安堵の笑顔。なお、条件がいい日なら竿頭は10尾を超えることがあり、今季のマゴチは期待十分だ。