晴天ベタ凪と船釣り日和に恵まれた12月。
肝が大きくなり抜群の食味となる旬魚・カワハギを狙い、この釣りが大好きで達者な相方・智ちゃんと和歌山県湯浅町栖原から出船した。
食べ味も釣り味も
魅力たっぷり
“バクチウチ”と呼ばれる
エサ取り名人
バクチウチという魚がいるのをご存知か?漢字表記すると博打打ちとなる。この魚の正体は、聞いてビックリ、見てびっくり、釣り人なら誰でも知っているカワハギのことだ。和歌山県ではカワハギをバクチウチと呼ぶ。何故にバクチウチなのか、調べてみると面白い答えが見つかった。博打好きの遊び人が博打に負けて支払うお金がなくなったとき、身ぐるみ剥がれて追い払われるのがオチだ。同じようにカワハギも料理するとき身ぐるみを剥がれてから切った張った?されるところから、こんな呼び名がつけられたそうだ。
昔から“一度はかかるカワハギ病”という名言がある通り、一度カワハギ釣りの面白さを経験すると、まさに「病膏肓にいる」に陥ることも珍しくない。さらにカワハギの魅力をつけ加えるなら、水温の下降と共に肥大する、世界三大珍味のひとつフォアグラに似た肝の美味しさが挙げられる。肝醤油でいただくカワハギの薄造りは、痛風もちの僕にとって悪魔の食べ物だが、激痛を我慢してでも食べてみたい、まさに“魔味”なのである。
紀伊半島沿岸の海水温がようやく17・18度台まで下がってきた。これはカワハギの肝が肥大し始める水温である。そこで今回も阪本智子さんと一緒に和歌山県湯浅町へ“肝パン”カワハギを狙いに出かけた。
白々明けの栖原漁港を出船したのは午前6時半だった。運のいいことに太平洋高気圧が日本列島の上空に張り出してきて、朝方は冷え込んだが快晴無風で海はベタ凪だった。
手を替え品を替え
誘いを入れる
腕の差がでるカワハギ釣り
いい凪なので日ノ岬まで走ってみようか、と言っていた船長だが、由良町白崎の沖でエンジンの回転を落とした。日ノ岬沖は上げ潮だと喰うが、下げ潮に変わると水温が下がるからか喰い渋るので、とりあえず白崎沖でお土産を釣ってから日ノ岬沖で良型を狙ってみようと、気を変えたようである。
前夜に剥いておいたアサリを締めたエサが威力を発揮してくれるか、期待を込めての第一投である。水深は30m余り。潮は速くないが底が粗いので根掛かり要注意のポイントである。とりあえずオモリベタでスタートして、軽く誘い上げてからタタキを入れ、静止時間を長めにしてアタリを待つ。
船はトモ流れ。僕の左隣で竿を出す智ちゃんが潮上になる。カワハギは智ちゃんが最も好きな釣りで、最も得意な釣りでもある。何しろ関東のカワハギ釣りの大会で、決勝まで進んだことがある実力の持ち主なのだ。そんな実力者がすぐ隣で潮上に入ってバンバン釣られたら、結果は火を見るよりも明らかだ。
スタートから1時間ほどはアタリもポツポツで、智ちゃんとは3匹差ぐらいで追走していたが、彼女が“つ抜け”したあたりから猛ラッシュが掛かった。差はグングンと開いてとても追いつける状態ではない。余りによく釣るので、どんな釣り方をしているのかと教えを請うた。その答えは、お地蔵さんの釣りがいいと…。つまり、底を50cmほど切って何もせずにじっとアタリを待つだけ。なるほどこの釣り方でも確かに釣れたが、何もせずにじっと待っているのが辛い。で、我慢しきれずに仕掛けを動かしすぎるから結局釣れないというジレンマに陥った。
智ちゃん先生は、お地蔵さんの釣りもやっていたけど、手を替え品を替えて攻め続け20匹で竿頭。僕は後半も失速したままで6匹で完敗。この差って、潮だけの問題ではないよね。アームの差が大であることを自覚しつつ竿を納めたのだった。