釣って面白く、食べても美味しいという釣り物は数多くあるが、その中で夏から秋にかけてダントツの人気を誇るのがイカ釣りではないだろうか。
そんなイカの中でも人気のケンサキイカを狙い、和歌山へと向かった。
地方により呼び名の変わる
ケンサキイカ
ひとくちにイカ釣りと言っても、アオリイカもあればスミイカにヤリイカにスルメイカ、さらには巨大なタルイカ釣りなど、季節に応じて楽しめる相手に不自由しないが、釣りの面白さ+美味しさの度合いでいえば、やはりケンサキイカがイチオシではなかろうか。
釣った日よりも、翌日の夕食にいただくケンサキイカの刺身が最高だ。ムチッとした歯を押し戻すほどの弾力を楽しみながら噛み砕いているうち、じわじわと身から湧き出てくる甘さは糖度の高いメロン並み?この甘さに感激しない人は居ないはずだ。
そんなケンサキイカを求めて、今回も阪本智子さんと一緒にやってきたのが和歌山県の美浜町だ。日高川の河口近くにある浜ノ瀬漁港から出船して、泉都・白浜の沖まで走り、当地でアカイカと呼ばれているケンサキイカを狙う。
それにしてもケンサキイカの呼び名はややこしい。和歌山や三重でアカイカと呼ぶのは、釣り上げたときの鮮やかなワインレッドの体色から来たものだと理解できるが、丹後半島から但馬海岸、山陰地方でシロイカと呼ぶのは、釣り上げたときのほぼ透明に近い体から連想したのか、死後に白濁してしまった体から生まれた呼名なのか迷うことしきり。この他にも若狭ではマイカ、東京湾ではマルイカ、長崎ではササイカや産地名を冠したゴトウイカ、標準和名のヤリイカを差し置いて、ケンサキイカをヤリイカと呼ぶのは熊本県だ。かと思えば高知県の宿毛市では、ケンサキイカをスルメイカと呼ぶ無礼?がまかり通っているから面白い。
田辺沖に集まる船に
期待が高まる
能書きはこれぐらいにして釣りにかかろう。田辺沖に到着したのは、午後7時を過ぎた頃だった。周りに三々五々集まってきた釣り船がいつもの年より多いのは、アカイカ好調の証か?そうであれば嬉しいのだが、釣りは釣ってみなければ分からない。なので、とりあえず胴突きのスッテ仕掛けを用意し、これを竿受けに預けたままスロー巻きで誘いつつ、メタルスッテでも狙ってみようと欲ばったのだ。
優しく誘いをかけて誘うも
この日はどの船も苦戦の様子・・・
日が沈むまではイカも浮いてこないので、とりあえず底からスッテ仕掛けで探り始めたら、幸先よくアタリ。ちょっと小振りだがどこの釣り場でもよく乗る紅緑の2.5号のスッテに抱きついて上がってきた。
水深は40mを超えているので、もう少しイカが浮くまでメタルスッテはお預けと胴突きのスッテ仕掛けにかかりきりになったが、潮時が近付いても忙しいほど乗ってくれるわけではない。なので、こちらの仕掛けは竿受けに預けたまま、時々メタルスッテにも手を出してみるのだが、イカの乗りが渋いときにどちら付かずの釣りをやってもいい結果が出るわけではない。そう思って途中から胴突きのスッテ仕掛けに専念したが、どうしたことかこの日のアカイカはご機嫌斜めだ。
こんな日は派手な誘いはかえって逆効果だろうと、ストロークを小さくし優しく誘う釣り方にしたが、状況は一向に好転しない。漁業無線から聞こえてくるのは「あかなよ~」という声ばかりで、悪いのは本船だけではなかった。
智ちゃんも早々にメタルスッテは諦め、胴突き仕掛けで狙っていたが、手持ち竿で小まめに誘うのがいいのか、僕よりはハイペースで上げている。余りに釣れ具合が悪いので船長も1時間近く残業?して釣らせてくれたが、僕はスルメイカ混じりで16パイ、智ちゃんは小まめに誘って乗せていたので、26パイと10パイもの大差がついた。アカイカは胴長10~20cmが中心で、時折20cmを超える良型?が混じる。