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一竿風月トップ
「一点集中」吉田康雄、8年目の印旛。「飛天弓 頼刃 またたき」で、夢のゴーマルに肉薄す。【後編】

 

 

今まで以上に「原点回帰」を強烈に意識した、8年目の春――――――。
そもそもなぜこの企画をやろうと思ったのか。その出発点は、「あの興奮のるつぼと化す印旛の乗込み祭を、みんなに伝えたかったから」。
そう思い当たった吉田康雄は、2021年春の印旛挑戦のキーワードを「一点集中」に決めた。
「取材は1回。ポイントも1点に絞ります。」
清々しくそう言い切った吉田が狙いを定めたのが、ゴーマルの可能性が最も高いと言われるゴールデンウィーク中の大乗込みのタイミング。
外せば、もう今年はそこで終わり…。
勇気を持って背水の陣を敷いた吉田の「漢・野釣り」に、奇跡は起こったのか。

 

前編記事はこちら

 

竿、さらに短く。雰囲気が変わる。

まさか「アタり過ぎて悩む」という展開が待っていようとは、吉田も筆者も思いもしなかった。それも例の印旛名物「マブナ地獄」ではなく、ウキを動かしているのは間違いなく「本命」なのだ。

興奮を抑えるかのように竿を7尺に短くした吉田。水深は20cmほど浅くなり、60cmに。ちょうどいい塩梅だ。
「いい感じです。釣れそうですよ…。」 グワングワンと激しい大波のようなアオリ。これは10.5尺の時にはなかったものだった。
「あのアオリは間違いなく大型のへら。マブナだったら、大きくてももっとチョコチョコとした動きになるはずです。」
手応えあり。
グワン、グワン…
断続する大きなアオリの中、グっと堪えて待つ吉田。
喰わせなくては意味がない。
早切りはスレを誘発させるだけでなく、エサを舞い上げるだけ。
吉田はすかさずハリスオモリをセットし、さらによけいな動きを抑え込んで「待ち」の態勢を整えた。
グワン、グワン…
思わず右手がピクっと動いてしまうような、明らかにへらと分かるアオリ。しかもそれは、間違いなくデカそうだ…。
そして、ついに…。
「ズン…!」
6時50分。大きくアオられた太いトップが1目盛、はっきりと、そして重々しく刻んだ。
「よし、へらだ!」
吉田が叫んだ。
激しい水飛沫とともに銀鱗が踊る。
やった!
しかし…。
すぐに吉田の表情が悔しさと落胆に包まれた。
無情にも、ハリは顔の横に掛かっていたのだ…。
久しぶりに見た、印旛の凄いへらだった。
しかし吉田は優しくハリを外すと、躊躇することなくリリースする。
喰っていなければ、何の意味もない。写真も撮らなくていい。7年間貫いてきた、揺るがぬ「美学」だった。
「まあそれにしても凄いへらでしたね(笑)。『いる』ことははっきりしましたから、あとは喰わせるだけです。」
気を取り直し、次を打つ。
スレで場を荒らしたが、へらの気配は続いた。次から次へとへらが回ってくる、供給されてくるという、まさに理想的な状況だった。
「スレてもバラしても、すぐにまたアタりますね。それもマブナ交じりではなく、全てへら! しかし相変わらず喰わないですね(苦笑)。やっぱりそう簡単ではないということでしょう。」
竿を7尺に短くしたのは明らかに正解だった。濃厚なへらの気配…。
しかし、やはりここは印旛だった。
こんなにデカいへらが目の前にいるのに、アタっているのに、喰わない! 喰わせられない!
ここでまた、吉田は勝負に出る。
喰わせられないまま時刻は8時。そよそよと風が吹き始め、暑くなってくる。いつまたマブナが動き始めるか分からない。そろそろひとつ結果が欲しい。言いようもない焦りが襲ってくる。
ここで吉田は竿をさらに短く、「またたき」の6尺へとチェンジする。
「いいですよ。手前の方がさらにへらが濃い感じですね…。」
恐るべし印旛の乗込み。手前の方が、さらにウキが動く!
7時、まるで大波に揺られるかのようにアオられていたトップが、「チクッ!」と鋭く刻む。
ゴンっ。
竿先が重々しく止まった。
今度は喰った!
しかし――――――。
「う〜ん、これは…半べらですね…。」
ゆうに40cmを越える素晴らしい魚体。しかし吉田はこの魚を「半べら」と切り捨てた。
思わず筆者は「これはへらでいいんじゃないの!?」と吉田に詰め寄る。しかし、確かに言われてみれば目が少しだけ下を向いている魚だった。なんとなく体高も低い。
さらに吉田は畳み掛ける。6尺から、何と最短の5尺へ!
ウキはもう「目の前」。筆者は水面に影を落とさぬよう、少し離れたところから吉田のウキの動きを固唾を飲んで見守った。
そして…

 

まさに大乗込み。手前の方がよりへらが濃いという状況の中、ついに吉田は「またたき」の5尺を繰り出す。

ついに乗ったか!?

「マジか…」

竿を「またたき」の5尺に替えた後、へらの気配はさらに濃くなった。

しかし、空振り、スレ、バラシの連続…。どうしても喰わせることが出来ない。
気温はぐんぐん上昇し、まるで夏の様相を呈してくる。暖かくなれば、いつまたマブナが喰い始めるか分からない。今はへらが濃過ぎてエサに近寄れないだけなのだ。
早く、早く1枚…。
不思議なことに、「ほぼへら」という半べらはきっちり喰ってくる。それがまた悔しい。
8時、尺半級のスレ。
9時5分、半べら。
9時20分、尺半級のスレ。
9時40分、またスレ…。
それはある意味、吉田にとっては拷問のような釣りだった。
竿が曲がるたび、声にならない声をあげて悶絶する吉田。
なぜだ。なぜ喰わない!?
11時45分、また半べらが喰う。
「ちょっと竿とエサを変えてみます。」
ここで吉田が動く。
エサ打ち点を変える意味で、竿を5尺から6尺に。そしてエサを、グルテン量の薄いものにチェンジしてみる。

新べらグルテン底 100cc 
グルテン四季 100cc 
 120cc

少し細かいウキの動きが増えてきたことから、エサの塊感を弱める狙い。そして12時5分、その時はやってきた。
竿とエサを変えた2投目。
グワンと例の大きなアオリの後、さらに粘り強く待っていると、この日初めて「グググッ」とトップがボディまで返してきた。
喰い上げだった。
経験上、喰い上げはへらが喰っている可能性が非常に高いアタリである。当然、吉田がこれを逃すはずもない。
「よし! これはどうだ!?」
竿に伝わった確かな重量感に、吉田は思わず大きな声をあげた。
しかし、なんということだろう…。
「マジか…」
左手でタモを探しながら一度は立ち上がりかけた吉田が、どっかと釣り台に腰を落としてしまった。
白いお腹を見せて大きな魚が浮上する。
ハリはエラの下あたりに掛かっていた。
スレだ…。
そして、吉田の落胆の意味、その言葉の意味が分かった。
腹パンの本物。しかも、見たこともないようなサイズだった。
デカい…。
筆者は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
印旛には、まだこんな魚がいるのか!
正直、今までの7年間の「釣れなさっぷり」に、もしかしたらもう印旛には昔のようなゴーマルクラスはいないのではないか、とさえ感じ始めていた。年を重ねるにつれ、ゴーマルどころか1枚さえ遠くなっていたからだ。そして、釣れても40cmが精一杯だったから。
しかし、いる。
ちゃんといるじゃないか!
それが分かっただけでも、今年の「一点集中」は意味があったじゃないか!?
そう思えるくらい、これまで見た中で最高のへら鮒だった…。
「測ったらたぶん、50cmに絡むと思いますよ」
吉田は悔しさと、しかし「いた」ことに対する喜びが入り混じった何とも言えない表情をしながら、ハリを外すとそっと水中にリリースするのだった。
“マジか…”
色々な意味合いが交錯する、そんな一言だった。
この1枚で何かのスイッチが切れてしまったのか、パタリとへらの気配は止んだ。そして「たまにアタってマブナ」という、あのいつもの印旛が戻ってきて、やがて激しいハタキの音も収束していった。もちろん吉田は竿を変えエサを変え日没まで喰らいついたが、ついに本命を喰わせるには至らなかった。
18時30分。ウキは見えなくなり、14時間に及んだ激闘は静かに幕を閉じた。
「完敗でしたね。でも、今までで一番『近付いた』ような気がしました。」
清々しい表情の吉田康雄。
また負けた。
しかし、確かに「いた」のだ!
また、来年――――――。

 

マジか…」。見たこともないような巨大なへらが、白いお腹を見せて浮上した。スレだ…。

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ANGLER アングラー

吉田 康雄 YASUO YOSHIDA

1976年、東京都荒川区で生まれる。
数々の大会で上位入賞、全国大会進出を果たしているが、記憶に残るのは99年シマノジャパンカップへら釣り選手権大会の準優勝と、14年に実現した同大会優勝。人気ウキ師としても評価が高い。巨ベラ狙いにも積極的で、05年春には亀山湖で50cmを達成した。

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